新しい学術分野や技術に取り組み、より良い文化と地域社会を創る―札幌大谷大学

新しい学術分野や技術に取り組み、より良い文化と地域社会を創る―札幌大谷大学

札幌大谷大学は、その名の通り京都「大谷」の地に埋葬された、親鸞聖人のみ教えを建学の精神にしている。これはまた1906年(明治39年)、北海道初の私立高等女学校を設立した札幌大谷学園の伝統に由来している。現在は音楽と美術について学ぶ「芸術学部」、さまざまなアプローチで社会の課題解決を学ぶ「社会学部」の2学部で、地域社会と文化活動を牽引する人材を育成している。伝統ある学術分野、そして新たな時代のニーズとテクノロジー。この2つを融合した同大学の幅広い学びと、先進的なカリキュラムについて解説する。

道内芸術教育の先駆者として

北海道で初めて音楽学部を設立した札幌大谷大学では、浄土真宗の祖・親鸞上人の教えを建学の精神として「一人も取りこぼさない」「選別をしない」「裁かない」を教育理念に掲げている。その理念通りの面倒見の良い教育や手厚い奨学金制度が整っていることで地元では知られていて、地域住民からの信頼も厚い。

その音楽学部は現在「芸術学部音楽学科」へと改編。伝統の音楽教育は継承しつつ、時代のニーズとテクノロジーの進化を受けて、近年学びの幅を大きく広げている。ピアノ、声楽、管弦打楽、作曲、電子オルガン、音楽療法といったバラエティ豊かなコース編成に加えて2019年に新設されたのが、音楽系ビジネスでの就職や指導者を目指す学生のための「音楽総合コース」だ。クラシックからポピュラーまで幅広い実技科目のほかに、「音楽ビジネス論」「コンサートプロデュース論」といった音楽事業に関連する実践的な講義が充実している。また、「作曲・サウンドクリエイションコース」では、最新デジタル機器を使った作曲、編曲、サウンドデザイン、ミキシング等を学んでいく。時代とともに大きく変化する音楽という芸術領域を、先見的に見据えて学びに取り入れているのだ。

芸術学部・美術学科でも、伝統分野から広告デザインまで扱う表現は多岐に渡る。造形表現領域では油彩、日本画、版画、立体の4つの専攻があり、いずれも北海道の美術文化を支える人材を多く輩出してきた。メディア表現領域では2019年に「グラフィック・イラスト専攻」と「情報・プロダクトデザイン専攻」を新設。ここではビジュアルを軸に広告表現・伝達表現などを広く学んだり、デザインで何かを伝えたり問題解決するためのロジックやスキルを実践的に習得していく。そして2020年には「ファッション・デジタルファブリケーション専攻」が新設された。手仕事のイメージが強いファッション分野においても、3Dプリントなど最新デジタルツールの活用は不可欠だ。本コースではそうした技術の習得を通じて、ファッションやデザイン分野で活躍できる人材の育成に取り組んでいく。

地域社会を支える人材育成を

札幌大谷大学でもう一つ学びの根幹となるのが、学部開設から5年連続就職率100%という実績を誇る社会学部地域社会学科だ。単一学科で構成されているが、2021年より将来の目標や自分の興味・関心に合わせたコース(履修モデル)で学びを深めることができるようになった。

「行政法律コース」では、市民と地域社会が直面する政策課題や法律を学ぶことで、地域社会をマネジメントできる人材育成を目指している。「経済経営コース」は市場の担い手である企業の管理や経営手法について学び、新商品やサービスを企画・提案できるイノベーティブな人材を育成する。「教育福祉コース」では、こども福祉・地域ケア・スポーツ教育の3つを切り口に、次世代の地域社会にふさわしい新しい福祉を見据えた幅広い学びを展開する予定だ。「観光メディアコース」ではコミュニティデザイン・観光・地域プロデュース・情報・メディアを軸にさまざまな立場で地域貢献のあり方を学ぶとともに、新たな社会モデルの創造や地域の課題解決にも取り組んでいく。どのコースも社会で即戦力となりうる実践的なスキル習得を目指したカリキュラム編成になっているため、新しい人材育成の試みに地元企業や自治体からも熱い視線が注がれている。

注目の初年次教育プログラム導入

また札幌大谷大学では、学部の枠を超えた幅広い学びを学生に提供するための新しいプログラムや制度が次々に導入されている。全新入生が受講する「初年次教育プログラム」は、全国的にも先駆けとなる新しい試みだ。これは同大学での学びを幅広く網羅した「自分をツタエル」「音でツタエル」「声でツタエル」「絵でツタエル」「体でツタエル」「言葉でツタエル」「文字でツタエル」という7つのアプローチを用いた授業プログラムで、人間力を鍛えて高いコミュニケーション能力の獲得を目指している。また学生がより幅広い視野と学際的な知見を身につけられるように、学科の枠を超えて異なる分野の授業を履修できる副専攻制度も導入された。例えば地域社会学科の学生が、音楽学科の実技レッスンを履修することができる。

こうした制度で学びの幅を広げてきた学生が、最終的に就職や進学で夢を実現できるように実施されているのが、全学科共通のキャリア支援プログラムだ。このプログラムでは公務員試験や資格取得、あるいはコンクールの出場支援など、進路別に4タイプの多彩なカリキュラムを用意。プログラムの参加で取得した単位は卒業単位に算入できるので、学生は課外活動や資格の勉強、ボランティアにも安心して取り組めると学生からの評判も上々だ。

学科の枠を超えて幅広く学べる制度と、将来を見据えたきめ細かな就職支援プログラム。これらの取り組みがどう身を結んだのかは、全学科平均で99.1%という驚異的な就職率を見れば、あらためて説明するまでもないだろう。

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