【2021年大学入試は浪人生が有利!?】超安全志向が続く今年、あえて考える「浪人」という選択肢

【2021年大学入試は浪人生が有利!?】超安全志向が続く今年、あえて考える「浪人」という選択肢

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未だに見通しの立たない大学入試改革

大学入試制度が揺れている。

2021年1月に新たに始まる大学入試「共通テスト」において導入が予定されていた、英語試験(いわゆる英語4技能試験)の民間委託、「大学入試英語成績提供システム」、そして、国語と数学の試験における記述式導入が相次いで延期となったのは、昨年の年末だ。

文部科学省では、「大学入試のあり方に関する検討会議」が設置され、再検討が開始されたが、方向性はいまだ見えない。

入試制度を変更するにあたっては、受験生に不利益が及ばないようするため、「2年前ルール」が決められている。新しい入試制度は、決まってから2年間は周知期間とし、その期間内には実施しないというものだ。これは法的なルールではなく、文科省と各学校·国民との間の紳士協定のようなものに過ぎないが、現況、このルールに逸脱した異常な状態が続いている。

一番困るのは、受験生、とくに今年と来年の受験生だ。もし、今年、第一志望に合格できなかった場合、浪人して来年度に再チャレンジすべきか。それとも、来年度の不明確な入試制度を避けるべく、今年合格できた準·志望大学に進学すべきか。今年度の入試結果がそろそろ見えてくるこの時期、もういい加減にどうなるか教えてほしい、という気持ちでいる受験生·保護者や学校の先生方も多いのではないか。

しかし、先日(2月13日)に行われた文科省の検討会議においても、記述式や英語4技能評価について意見は割れ、次の試験はどのようになるかも決められていない。

リスク回避の傾向が如実に現れた「超安全志向」

受験生は待ったなしである。いったい、どうすればよいのだろうか。

政策決定の議論などで出てくる原則に、「予防原則」というものがある。一般に、甚大な被害が予想されるが、その実態は不明確な状況において意思決定を行なう場合、この「予防原則」を適用し、最悪の被害を避ける決定をするのがよいと言われる。

今回のような事例ではどうだろう。ここでいう「被害」とは、どういった状況をいうのか。おそらくは、多くの受験生が志望の大学に適正な評価をされず不合格となり、不本意な進学をしなければならなくなることが、最大の被害となるだろう。そして、その事態は、すでに今年度の試験結果において、発生しつつある。合理的な受験生であるほど、意識的·無意識的はともかく、予防原則的行動を取ることが予想されるからである。

「超安全志向」とも言える進路決定は、今年度からすでに始まっている。

2021年度入試は「浪人生有利」の可能性が高い

しかし、さらに冷静に、合理的に考えてみよう。今年度の受験生は、超安全志向の進路決定を行なうだろう。これは、浪人·再受験が減るということを意味する。単純な受験者数、競争率から考えると、もともと第一志望に届かなかったら浪人するつもりでいた受験生は、来年度に受験したほうが有利であるということになる。

では、実質的難易度は、どう変化するだろうか。

もちろん、国公立第一志望か、私立第一志望かによって、また受ける大学はどこか、受験科目は何か等によって、難化する場合も易化する場合もあるだろう。しかし、新·共通テストの内容がいまだ不明確だという点のみを理由にして、来年度のチャレンジを避けるというのは得策ではない。

どうしても第一志望、とくに国公立の第一志望にこだわりがあるなら、1年の浪人を選択してもよいと、私は考えている。

と言うのは、来年度に大きく変化するテストは、センター試験の後継である共通テストであり、2次試験の方ではない。

多くの国公立大学は、今般の入試改革において、明確な態度を表明して来なかったし、どちらかというと日和見的な態度を取っている大学も多かった。確固とした態度表明を行なった大学の多くは、国公立でも上位校であり、多くは制度改革に否定的であった。

多くの国公立大学は、1次試験たる共通テストの内容が変化するからこそ、選抜すべき人材の質を予測し、一定に保つため、慎重に2次試験·個別試験を実施することを選ぶだろう。

来年度の受験において大きく変わると予想されるのは、もともと実施予定だった英語の試験内容変更(筆記試験100点、リスニング100点)と、国語への「実用的文章」「複数課題」の導入、数学の試験時間変更の3点である。これらの対応さえ考慮に入れておけば、そしてその変更に伴う心理的負担を許容できれば、来年度の受験で今年よりも下手をしてしまうことはほとんどないだろう。

もちろん、大学は慎重に選ばないといけない。ただ、一番大きく変わる英語の試験(リスニングの比重が大きくなることは決まっている)については、各大学が配点比率の調整を行う予定で、多くの大学はリーディング:リスニングの点数比を3:1とか4:1、場合によっては5:1にすることを発表しており、センター試験での一般的な配点比率とあまり変わらないところが多い。また、見送られた「英語4技能試験」の導入(とくに話す技能)と国語·数学の「記述式」導入は、来年の入試で実施されることは絶対にないから、大きく変わるのは、結局は再来年度以降ということになるだろう。

私立大学の方でも、急激な変化があるところは多くはない。ただし、従来、独自試験が中心だった上智大学などが、新·共通テストを利用することになるようだ。早稲田大学では、一部の学部の一般入試枠で、共通テストを必須とすることが決まるなど、徐々に入試制度の変化が始まっている。

しかし、共通テストの問題がどのように変わるにしても、おおむね、今までのセンター試験のレベルを大きく超えることはない。共通テストは、旧·センター試験と同様、全国一律に東大·京大から一般の大学、短大まで含め1次試験として利用できるテストとして実施される以上、大幅に難化すると無理があるからだ。来年度に向けて基本的な受験勉強を進めておけば、新たに大きな負担を強いるほどの対策は必要ない。

進路未定というのは、心理的に大変きつい状況だ。そのうえ、制度も未確定となれば、不安は一層増すことだろう。しかし、以上に述べた通り、まっとうな勉強を積み重ねていれば、新しい制度でも、恐れるに足らずである。そもそも、目標が大きければ大きいほど、リスクを取らなければならないのは、どんな世界でも必定である。勉強は決して努力を裏切らない。安定志向も悪くはないが、大きく羽ばたきたいのであれば、いまだ浪人する価値はあると言ってよい。

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【執筆者】
原田広幸(はらだ ひろゆき)
文筆業、ファシリテーター、進学・受験アドバイザー。東京外国語大学卒、中央大学法学部を経て、東京工業大学大学院修了、東京大学大学院総合文化研究科中退。専門は社会学・哲学。都市銀行、投資顧問、短大勤務、医学部予備校経営など、幅広い職種を経験。著書に『医学部入試・小論文実践演習~生命・医療倫理入門編』(エール出版社)、『30歳・文系・偏差値30でも医学部に受かる勉強法』(幻冬舎)、『医学部に受かる勉強計画』(幻冬舎)などがある。
Twitterアカウント→@harad211

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