今年もサイエンス・インカレが開催!高校生にも研究発表の機会を〜水戸第二高等学校編

今年もサイエンス・インカレが開催!高校生にも研究発表の機会を〜水戸第二高等学校編

高校生のうちから自らの研究に取り組む生徒が増えている。研究の成果は何らかの形で社会に発表したいもの。「サイエンス・インカレ」はそんな高校生の希望を叶えてくれる研究発表会だ。昨年度に研究発表を行った茨城県立水戸第二高等学校の生徒にとっては、大学生や社会人との交流ができて、普段とは違う刺激的な体験となったようだ。
取材・文 松平信恭(大学通信)
構成 小林 聡(大学通信)


日本の高い科学技術力は社会を成熟させる原動力となってきた。だが近年は世界で日本の研究の存在感が低下しつつあり、研究環境の改善や若手研究者の育成が急務となっている。
こうした中、研究者を志す学生に自主研究の発表の場を与えようと毎年開催されるのが「サイエンス・インカレ」。創造性豊かで未来を切り開く「出る杭」となり得る人材の育成を目指して、文部科学省が主催する研究発表会だ。

サイエンス・インカレは自然科学を学ぶ全国の大学生、高専生が自主研究で競い合い、切磋琢磨する場として過去8回にわたり開催されてきた。口頭発表とポスター発表の2種類があり、書類審査を通過した研究に成果を発表する機会が与えられる。支援団体(SIC※)も多く社会人目線での評価を受けられるほか、文部科学大臣表彰など多数の賞が用意され、優秀な発表者は表彰される。

※SICとはサイエンス・インカレ・コンソーシアムの略で「サイエンス・インカレ」を応援したい・将来にはばたく科学技術人材を応援したいという企業・団体の連合体

このようにサイエンス・インカレの主体は大学生の研究発表だが、昨年度から新たに高校生の発表がプログラムに組み込まれた。今年度も引き続き、全国の高校生に自主研究の発表機会が与えられるという。
昨年度の参加校である茨城県立水戸第二高等学校は、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)として科学教育に力を入れる。サイエンス・インカレ当日は「窒素気流中における閉鎖系Belousov-Zhabotinsky反応(BZ反応)の長時間挙動」について発表・質疑応答を行った。実際にサイエンス・インカレに参加した科学部数理科学班の吉井万里奈さん、宮本果弥さん、森田メリイさん(いずれも3年生)と、研究をサポートしてきた西田淳先生が、参加後の感想や日頃の研究活動の様子を次のように話してくれた。

研究者との対話が刺激に生徒の興味関心が広がる

—サイエンス・インカレに参加してみて、いかがでしたか。

宮本 研究発表の機会は多いのですが、サイエンス・インカレは特に人が多くて、高校生がほとんどいない環境なので緊張しました。

森田 大学生や企業の人も来ていて、自分たちの発表以外にもさまざまな研究を見ることができて貴重な経験になりました。

吉井 大学や企業の研究経験のある人が集まるので、普段の研究発表会よりも質疑応答で深い対話ができて、そこから気づくことも多かったです。

西田 興味・関心が広がるという意味で、生徒にとってすごく良い刺激となりました。運営の大学生スタッフからアドバイスをもらえるなど進路指導にもつながると感じました。

—皆さんが研究している「BZ反応」とはどんな現象ですか。

森田 簡単に言えば、赤から青に、青から赤に、繰り返し色が変わる振動反応のことです。

吉井 いわゆる基礎研究で、その原理を他のものに置き換えることでさまざまな応用ができます。何を変えれば振動が変わるのか、暗い部屋で装置をセッティングし、48時間後に確認して細かなデータを集めています

—BZ反応の研究のきっかけは。

宮本 部の先輩がこの研究を代々続けていたので、そのままそれを引き継いで取り組んできました。私たちはもうすぐ引退ですが、まだまだやりたいことはたくさんあるので、後輩にも続けていってほしいと思います。

——普段の研究の中で気をつけていることや苦労したことは。

宮本 1年生のときに実験を始めた時は正確なデータがほとんど取れなくて、しっかりしたデータを取るまでに時間がかかりました。BZ反応は正確に値を測ることが大切なので、実験では繊細さを大切にしています。

森田 薬品を多めに入れてしまう、設置の時に倒してしまうなど、さまざまな失敗をしてきました。そういう時に悲観的にならずに、楽天的に自分の実験に向き合うようにしています。

吉井 BZ反応は何に役立つかが分かりにくく、実験も暗室で行うので本当に地味で「日陰者」という感じです。ただ、人間の生体反応など、さまざまなものに応用できる研究なので、そのプライドや意地を持って取り組むようにしています。

西田 教員としては生徒の興味・関心をできるだけ拾うように心がけています。教える立場ではなく、一緒に研究し合うような立場でのサポートを意識しています。

毎回の発表でアイデアを蓄積して改善につなげる

—発表でのプレゼンテーションがとても上手ですが、どのような工夫や練習をしていますか。

森田 聞いている人に自分の実験の楽しさや結果をわかりやすく伝えることを大切にしています。他の人の発表を見て、良いところを取り入れるようにもしています。

吉井 受けた質問を全部記録するようにして、それに対する答えを蓄積して毎回発表に挑んでいます。

宮本 1年生から授業で発表する機会があったり、プレゼンのやり方についての講演会もあるなど、学校で学ぶ機会がたくさんあることが大きいです。

西田 場数も大切ですが、それ以上に「伝わらなかった」「全然質問が出なかった」という悔しい思いをした後にはいろいろなアイデアが出てくる印象があります。

——研究活動を通じてどんなところが成長したと思いますか。

宮本 以前は実験をやっていて分からないことばかりでしたが、少しは理解できるようになりました。

吉井 研究をグラフなどに表すことで、できるだけ噛み砕いて知識のない人にも分かりやすく見せられるようになったと思います。また、研究を通して知り合う大学の先生やSSHで研究をしている人と、レベルの高い知識のラリーもできるようになりました。

森田 発表の際に順序立てて話せるようになりました。また、何らかの現象を見つけたときにその原因を考える視点を日頃から持てるようになりました。

—将来のことや、今後やってみたい研究について教えてください。

吉井 研究者になりたいと思っています。企業の研究者になるか、大学なのかはまだ決めていませんが、とにかく無機化学の分野でやっていこうとは思っています。大学では錯体化学という分野の研究をやりたいと考えています。

宮本 大学ではセキュリティ関係の研究をしたいと考えています。研究者というよりはIT系のエンジニアに興味があります。

森田 食べることが大好きなので食品系の会社で好きなことを仕事にしたいと考えています。大学では食感に関する研究やお酒をつくってみたいです。

すぐに答えを求めずにコツコツ研究に向き合う

—これから研究に取り組みたいと考える人に向けてメッセージを。

宮本 研究内容を理解する中で勉強を先取りできるのも、研究に取り組むメリットだと思います。

森田 基礎研究は参考文献の数が少なく、暗闇の中で道を切り開くイメージです。研究全般に言えるのが、結果が出ない時期もあるということ。でもそこは、ある意味で研究のターニングポイントだと思います。一度立ち止まって考えてみて、あえて別のことをすることで道が開けることもあります。それも研究の醍醐味だと感じます。

吉井 基礎研究は社会貢献とのつながりが見えにくく、実験も地味ですが、コツコツ続けられる人には楽しい研究だと思います。注目されにくい研究だからこそ感じられる魅力もあるので、それを楽しんでほしいです。

西田 研究のきっかけは「なんだろう」「分からない」という疑問を持つことだと思います。今の生徒たちはすぐに答えを求めがちですが、モヤモヤした状態を楽しむのが研究の大事なところです。分からないことを理論的に探ってみる姿勢を大切にし、身近なものから研究につなげてほしいですね。

今年度のサイエンス・インカレは令和2年2月29日・3月1日に滋賀県の立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催される。日頃の研究活動を広く知ってもらう機会となるだけでなく、さまざまな参加者との対話から新たな気付きを得るなど、貴重な経験となるのは間違いない。研究活動に興味のある生徒には積極的な参加・見学を促してほしい。

第9回 サイエンス・インカレ
オフィシャルサイト
http://science-i.mext.go.jp/
上記サイトより応募要項、チラシをダウンロードできます
問合せ先●サイエンス・インカレ事務局
〒108-0073 東京都港区三田3-2-8 Net2三田ビル 株式会社マインドシェア内
TEL:03-6823-6210(受付時間/10:00〜17:00 ※ 土・日・祝、正午から1時間を除く)
E-mail : science-i@mindshare.co.jp

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