就職率は学部系統ごとに異なる。以前は資格が取得できる学部が突出して高かったが、就職状況の好転もあり、近年は経済系など文系学部が盛り返している。
同じ大学でも、学部によって実就職率は意外に差がある。今春の大学全体の実就職率が89・7%の明治大を例にとると、最も低い文が82・2%なのに対し、最高の総合数理は94・7%と10P以上の差があった。もちろん、企業が学部を指定して採用活動をしているわけではないが、下記の「学部系統別平均実就職率」では、最高の看護・保健・医療系の93・2%に対し、最低の薬学系は84・8%と8・4Pの差がある。
看護・保健・医療系以外に実就職率が高い系統は、家政・生活・栄養系や福祉系など、就職に有利な資格が取得できる資格系学部。当たり前だが、資格系学部の就職は、原則として資格取得が前提条件。その点、看護・保健・医療系など、前出の学部系統で取得を目指す資格は、看護師や管理栄養士、社会福祉士など、比較的資格のハードルが低いことが実就職率が高い一因。
同じ資格系でも、国家試験のハードルが高い薬学系は平均実就職率が低い。私立大を中心に、薬剤師国家試験の合格率が50%を切る大学が数多くあることが平均実就職率を押し下げている。薬学系の実就職者ランキングの上位は、1位の北海道大が100%で2位の近畿大が99・3%などと高い一方、下位の大学は70%を下回るケースも少なくない。資格系でも平均実就職率が低いのは、このような事情があるのだ。
学生の売り手市場化進み非資格系の就職率上向く
ここ数年の大学生の就職状況の好転に伴い、非資格系の平均実就職率が上がり、資格系との差が詰まっている。商・経営系と看護・保健・医療系の平均実就職率の差は、14年の9・9Pから17年は4Pに縮まっているのだ。
非資格系の中で伸びが顕著なのは文系学部。14年から17年の間に、理工系が5・8P増なのに対し、法学系が8・7P増、文・人文・外国語系が8・6P、商・経営系が7・5P増などとなっている。文系学部の中でも、平均実就職率が高い系統は経済と商・経営系。中でもPBL(問題解決型授業)を導入している大学の成果が上がっている。社会人と一緒に課題を解決する授業をとおして、働くことへの意識付けが出来ている学生を企業は評価しているのだ。教員が学生を育てることに協力的で、こうした取り組みが広がっている大学は就職率に良い影響が出ている。企業の採用意欲の向上とともに、大学の人材育成力も経済系や商・経営系の就職率アップを後押ししているのだ。
系統別のランキングを見ると、経済系のベスト3はノースアジア大・経済(100%)、福井県立大・経済(96・6%)、愛知学院大・経済(96・1%)。商・経営系のベスト3は、安田女子大・現代ビジネス(99・2%)、昭和女子大・グローバルビジネス(97・3%)、岐阜経済大・経営(97%)だった。
14年と比べると実就職率の伸びが顕著な法学系だが、17年の学部系統別平均実就職率は下から3番目。法曹や公務員などの資格試験準備のため、就職せずに卒業する学生が多いことが影響している。法学系より就職率が低い文・人文・外国語系の要因も法学系と似ている。社会科学系に比べると文・人文系は修士・博士過程への進学や教員などを選ぶ学生が多い。外国語系も留学により留年する学生の比率が高い。法学系と文・人文外国語系ともに一般企業以外を考える学生の影響で、平均実就職率が低く抑えられているのだ。
採用形態の変化で理工系の就職力がさらに伸びる
理工系の平均実就職率の伸びは大きくないが、それでも、非資格系ではトップ。大学個別の実就職率は、1位の富山県立大・工(100%)をはじめ、2位の東北工業大・工(99・5%)、3位の金沢工業大の環境・建築(99・3%)、福岡工業大・工(98・8%)など理工系大学が強く、総合大学でベスト10に入ったのは、4位の福山大・工(99%)のみだ。他の系統と同様に比較的規模が小さな学部が上位を占める中、大阪工業大・工(97・2%)や名城大・理工97・2%)、芝浦工業大・工(96・9%)は卒業生が1000人を超える規模ながらランキングの上位に入っている。
近年の実就職率の伸び代が小さい理工系だが、18年卒以降は、採用活動の変化に伴い、再び他の系統と差を広げる可能性がある。学生の専攻内容や技術的な知識等を企業が点検し、その専攻ならこの仕事が活かせるというフィードバックを行う、“ジョブマッチング”が活発化しているため、大学を通じて1、2月頃に企業と接触する理系学生が増えているのだ。事前に技術面のスクリーニングを終えていて、3月以降の就職活動がスムーズに進むこともあり、18年卒の理系学生の内定率は顕著に高く推移したという。マッチング面談が広がったことにより、早めに内定を取れる学生が増えているようだ。
ここまで見てきた学部系統別平均実就職率からは、実就職率が高い資格系や理工系、経済系、商・経営系と、やや低い法学系と文・人文・外国語系という図式が浮かび上がる。ただ、法学部などの就職率が低いのは学部の特性によるものであり、就職力が劣るわけではないことは押さえておきたい。