【岐阜聖徳学園大学教育学部】必要なのは自ら考え、変化に対応する力


小学校の英語教科化、ICTの導入……教育を取り巻く環境が急変する中で真に求められる
「教員の質」、そして「教員養成」とは?全国有数の教員輩出校である岐阜聖徳学園大学
の教育学部長秋山晶則教授にその答えを聞いた。


―教員養成の環境が変化しています。

団塊の世代の大量退職などによる教員の世代交代が落ち着いてきますので、あと数年で教員大量採用の時代は終わるでしょう。地域のばらつきがあり、都市部はまだしばらく需要がありますが、地方は一段落します。教員採用試験の倍率が下がっており、5倍台を切っています。教員の年齢バランスが崩れている中、社会からの要請も大きく変わりつつあります。これから
は、本当の意味での教員の質が問われてくると思います。教員養成系学部には、より実践的な指導力を持った教員の養成が求められているのです。

―教員に要求される質が変わっているということですか。

学習の質が変わってきている中、それを指導できる教員が求められています。象徴的なのはアクティブラーニングの導入です。ただ、これには現場も混乱があるようです。現在、アクティブラーニングは子どもが能動的に学ぶことにウエイトが置かれていますが、前提となる基礎的な知識・技能の習得や反復練習というプロセスも重要ですね。アクティブとパッシブの両面に留意する必要があるように思います。

【課題が残る小学校における英語の教科化】

―20年から小学校で英語が教科化されます。

個人的には、これまでの学習活動としての英語が教科化されたことに危惧を覚えています。英語が教科化されることにより、児童に早い段階で英語に対する苦手意識を植え付ける可能性もあると思います。指導力が高い教員に、異文化や外国語の世界に導かれていけば、すごく伸びると思いますが、そうでなかった時は英語嫌いになりかねません。教科化する以上は、優秀な
教員の養成が喫緊の課題です。

―英語の教科化に向けて、大学としての取り組みは。

英語の教科化を意識して、短期留学やホームステイをする学生が増えています。本学も児童英語の授業を増やすなどの対応をしています。「すべての会話を英語で」のルールがある外国語ラウンジの設置やネイティヴスタッフの充実、外国語学部との連携など、学生全体が英語に慣れ親しむ環境整備を進めています。ただ、母国語で高等教育、先端研究ができるという強味も忘れてはいけないと思います。母国語はもとより第二言語としての英語の面白さや深さを伝えられる教員養成を進めたいと思います。

―電子黒板やタブレットの導入など、教育現場のICT化も進みます。

ICTは効果的に使えば労力を少なくして情報共有ができることやコミュニケーションの効率化につながるなど、教育現場で役立つシステムですが、使うことを目的にすると、うまくいかないと思います。そうならないよう、本学では、ICT活用に関する授業内容の改善を行っています。また一部の単位認定に「教員のICT活用実践力検定」を導入し、受講生全員が検
定の合格を目指すことで、ICT能力の質を保証しています。

【学び続ける意欲がある教員養成を目指す】

―岐阜聖徳学園大学の教員養成の方向性は。

教育学部のカリキュラムは、学び続ける意欲とそのための土台を4年間でしっかり作ることを重視しています。知識基盤社会に急激に変わっていくといわれますが、本当はこれまでも変わってきているのです。そういう変わり目をしっかり理解して、考える力を養成しています。例えば、歴史が専門の私のゼミナールでは、毎回、今の社会の在り方を象徴的に示すことをテーマにプレゼンテーションを行い、みんなでディスカッションをします。その際、すぐに「NO」と言う学生がいますが、そうではなく、「YES,BUT」と、お互いが違うということを認め合うように指導しています。こうした視点を持った上で、刻々と変わる状況に対して、自分独自のアンテナを使って考える力が、教員として不可欠な能力なのです。この能力を引き出しに入れて、ブラッシュアップする積み重ねが自分を作っていきます。

そして、いろいろな場面で求められることがあれば、躊躇なく「やれます」と手を挙げられる教員になってほしいですね。天職は選ぶものでありますが、〝コーリング〞されるものでもあるので、その時のために準備ができている学生を育てたいと思います。さらに、そうした準備をした上で、自分の考えだけではなく、教育・研究の世界で〝巨人の肩の上に立つ〞と言われるように優れた授業手法などを先人に学ぶことも重視します。メタ認知も教員になる上で大切な能力なのです。

―しっかりとしたベースを持った上で、自分で考えることが教員に求められる重要な資質なのですね。

文部科学省も〝学び続ける教員〞を新しい教員像のキーワードにしています。知識は固まったものではなくて動いています。そういう中で、難しい課題を解決していくには、常にアクティブでいる必要があります。その基盤を学生時代にしっかり作れるように指導しています。

【地域と連携した教育で教員としての能力を伸ばす】

―岐阜聖徳学園大学は、国立大の教員養成系と比較してもトップクラスの教員就職率を誇ります。その要因はどこにありますか。

岐阜県教育委員会等と連携しているため、教育実習以外にも、多くの学生が地域の学校で研修をしています。学生の指導は大変なことと思いますが、快く受け入れていただいていることは、教員を育てる上で大きいですね。もちろん教育現場に行っただけでは力になりません。振り返りをしてそこで何が問われているのかを自分に落とし込んで考えることにより、学生はとても伸びていきます。さらに、卒論を必修にしていることも、優秀な教員養成に貢献しています。教員養成系は授業のスケジュールがタイトなこともあり、卒論をなくす大学も多いのですが、卒論は4年間の学びの集大成です。「こんなに勉強したのは生まれて初めて」という学生も少なくありません。卒論を書くことで、研究分野の壁の高さに気づきます。先陣の研究成果を全て理解することはできませんが、壁があることに気づき、そこに向けて学び続けるスタンスが大切なのです。岐阜聖徳学園大学は、こうした一連の取り組みを通して、これからの時代で活躍できる、教員養成をしています。

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