大学合格者高校別ランキングの使い方

大学合格者高校別ランキングの使い方

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大学通信が毎年調査・編集している大学合格者高校別ランキング。自分や家族の母校、子供の志望大学が、どこの高校から数多く合格者を出しているかを見るデータであるが、見方によって色々な情報がある。例えば数年前と最新版の難関大学ランキングを比較することにより、進学実績が上昇した高校がどこなのかがわかる。また首都圏の女子大を見ると、近隣の私立高校が多い大学、比較的広範囲で公立高校が多い大学など、それぞれの大学カラーを反映した結果があらわれている。さらに複数の大学ランキングを比較することで、A大学とB大学はほぼ似た高校からの受験生が多いなど、受験生の志向や予備校偏差値とは違う大学難易度がわかることもある。(大学通信オンラインでも公開中https://univ-online.com/success/

一例として北陸地区のデータを見てみよう。3月14日発売のサンデー毎日では国立の富山大学と金沢大学の、3月7日発売のサンデー毎日では私立の金沢工業大学の高校別合格者数一覧が掲載されている。これらのデータを見比べてみると、金沢工業大学の合格者高校の上位に出てくる、金沢錦丘・金沢二水・星稜・金沢桜丘・富山南・富山東・小松といった進学校は、いずれも国立の富山・金沢両大学合格者上位にも出てくる高校である。隣の福井県でも似た現象が出ているかもしれない。国立大学受験生が併願対象として金沢工大を選択しているためである。この件について金沢工業大学に話を聞いてみたところ、確かに以前は国立大学との併願数は多くなかったが、2016年に英語を一般入試で必須としたこともあって、国立大学との併願者が増加しているとのことである。また私立理工系大学は学費が高くなりがちだが、金沢工大には成績優秀者には国立大学標準額との差額が給付される奨学生の制度があることも一因だろう。

併願の話から少々離れるが金沢工大の教育についても話を聞いた。最近は産学協同教育である「コーオプ教育」が話題になっているようだ。これはNTT西日本、NECグループなどとの共同教育で、各企業の専門技術者が特別講義を行い、そこからの選抜者は実際に各企業へ数か月間勤務、実務に従事することで企業の最先端技術、具体的にはデータサイエンスやサイバーセキュリティなどを実践的に学ぶことができる。これは昨今話題になる「課題発見・解決型教育」でもあり、従来のインターンを数段進めたシステムである。また鹿島建設との「KIT×KAJIMA 3D Printing Lab」も、産学共同・学科横断型教育の一例として話題になっている(詳細はこちらhttps://univ-online.com/prflag/20284/)。こうした最先端教育の整備が進む一方で、学生同士の学び合い環境の推進、高校生・金沢工大合格者や入学予定者対象の「KIT入学教育」などの基本的な学習環境整備も進み、これは以前から有名だがテーマを決めてものづくりに専念できる「夢考房」もあるなど、すべての教育面に対する改革が巷で言われる「面倒見がいい大学」という評価につながっているのだろう。知識と実践を並行していることも同大の特徴である。なお金沢工大としては単なる国立大学併願校ではなく、高校生がここで学びたいと思う、第一希望での受験校となることを念頭に改革を行っているようである。

金沢工大に限らず他の地域や分野でも、出身高校データを比較することで新しい大学の見方が発見できるかもしれない。

金沢工業大学の夢考房Robocup@Homeプロジェクトでは、授業で学んだAI・IoTなどの知識を学生たちが実践する
金沢工業大学が2022年に設立した「KIT×KAJIMA-3D-Printing-Lab」。鹿島建設株式会社とともにコンクリートの3Dプリンティングを研究する

受験生や保護者は以前抱いた大学難易度の感覚をそのまま持って大学選びをしているかもしれない。しかし大学改革は年々進み、またその進度は大学によって様々であるから、大学の最新となる力を見極めて受験に臨む必要がある。一方高校の大学合格実績は私立校の場合目覚ましい増加を遂げていることはよくあるが、旧制高校の流れを汲む各地の公立上位高校の実力は上位のまま大きく変わっていないことが多い。こうした高校の数値を参考にして現在の大学の力を読み取るのも高校別出身高校ランキングの活用例だ。

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