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日本女子大学は1901年に日本初の組織的な女子高等教育機関として創立され、2021年に創立120周年を迎えました。今年開設30周年であり私立 女子大学で唯一 の理学部のほか、2023年に開設する国際文化学部とあわせて、5学部15学科となる女子総合大学です。
社会変化を捉え、社会のニーズに応える人材の育成に向けて、「自然と人間が調和する世界を、柔軟な思考で創造する」という理念を掲げる理学部の奥村幸子学部長にお話を聞きました。
取材・文 鈴木秀一郎
学生は実体験をとおして理解を深めていく
理学部長
奥村幸子教授
東京大学理学部天文学科卒業後、同大学院理学系研究科にて理学博士号取得。国立天文台・野辺山宇宙電波観測所研究員、東京大学教養学部宇宙地球科学教室助手、野辺山宇宙電波観測所電波天文学研究系ALMA推進室での准教授を経て、日本女子大学には2012年に着任。専門は電波天文学、宇宙物理学。
日本女子大学の理学部で重視しているのは、「論理的思考力」と「問題解決力」の向上です。
講義型授業で扱う理論や原理、法則を中心とする学びの体系は、他大学を含めた一般的な理学部と共通する部分もあることは確かです。ただし、本学のカリキュラムでは、講義型授業で多様な分野の知識を高めた後、実験・実習・演習をとおして実践力を育む授業の充実度に特長があります。
実践的な授業は、講義型授業で学習した理論を“追体験”する機会、つまり学生自らが実体験をとおして理解を深められる機会となります。実験は純粋に楽しいですし、グループワークをとおして仲間との協調性も養いながら、具体的な問題解決に向けて理論を応用する実践力が高まるのです。講義よりも手間を要する指導となりますが、建学の精神に「実物主義」が掲げられて以来、実践教育に重きを置く本学の伝統が脈々と受け継がれています。
加えて実験の授業では、可能な限り準備段階から学生が協力して関わり、自分たちの次に実験をする学生のために、実験後の掃除や備品類の整理整頓も重視しています。専門知識や実験技術の修得にとどまることなく、学びをとおして人間性が磨かれていく点にも“本学らしさ〟があります。
なお本学では、主に講義型授業で高める論理的思考力を「リテラシー」、問題解決力をはじめ、実験・実習・演習によって育まれる実践的な行動特性を「コンピテンシー」と位置づけ、外部機関による客観評価プログラムも導入しています。リテラシーとコンピテンシーは、就職活動において学生を評価する際の指標としても用いられるものです。理学部で1年次と3年次の段階でこれらの資質の外部評価を実施すると、特にリテラシーレベルが想定以上に向上する傾向が見られるほか、問題解決力や課題発見力、対人基礎力などで構成されるコンピテンシーレベルも着実に向上していることがわかります。コロナ禍では実験・実習・演習の機会が制限され、対人基礎力の停滞が危惧されたものの、分散授業などの取り組みの成果が表れています。
どんな最先端の技術も基礎理論や法則の積み重ね
理学部というと、自然科学の真理を探究するために黙々と実験に励み、専門特化した研究を突き詰めていく大学生活のイメージを抱かれがちです。ただし、もちろん深く探究することは大事ではあるものの、本学では幅広い分野を学び、分野間の相関関係を理解することが、論理的思考力や問題解決力の向上につながると考えています。だからこそ数物情報科学科(旧数物科学科)であれば、1年次に「物理」「数学」「情報」の3分野すべての必修科目を配置し、実験・実習・演習も経験。その後、三つのコースに分かれ、学びの集大成となる4年次の卒業研究・卒業論文につなげていきます。
一方で化学生命科学科(旧物質生物科学科)は、あえて必修科目を設置せず、学生が主体性をもって幅広い知識を修得していける自由度の高さに特長があります。学科間でプロセスの違いはありますが、横断的な学びによって知識を広げておくことが、自らの興味に沿った専門的な研究領域だけに限定されない論理的思考力と問題解決力の向上に寄与すると考えています。インプットする知識や情報が限定的であれば、アウトプットとなる問題解決能力も限定的にならざるを得ないため、学部設立以来、分野横断的な学びを重視しているのです。
ただし、幅広く学ぶにしても、大前提となるのは各分野における確かな基礎力です。基礎があってこその応用研究であり、画期的な技術の実用化にもつながるというもの。私たちの生活を豊かにしてくれる先端技術には、物理や数学、化学の基礎が必ず組み込まれています。基礎から応用へと発展していく仕組みに気がつき、論理的に理解していけることも理学部で学ぶ大きなメリットなのです。
理学部なら、基礎理論や原理、法則がどのように社会に実装されているかを理解する力が養われるでしょう。そして、横断的な学びをとおして、多分野の基礎的な知見を関連づけて考えられる力も向上します。多様な切り口で問題解決にアプローチする大切さにも気づくことができるはずです。実際、分野間の相関関係に気づけることに学びの楽しさを感じる学生は少なくありません。基礎を理解できて初めて、複雑化する諸課題に潜む根源的な要因を的確に捉えることができ、論理的思考力によって問題解決策を導き出すことができるのです。
理学部は2022年度に2学科の名称を変更
本学の理学部では、開設以来30年間にわたって積み上げてきた強みを直接的に学外へと発信することを目的として、2学科の名称を2022年度から変更しました。
理学部が誕生した1992年は、インターネットの普及によって世界が情報社会へと移行していく黎明期にありました。そのため当時の数物科学科では、当初から情報科学に関する科目を設置し、その後に導入した3コース制においても「物理」「数学」に加えて「情報」コースを設置して現在に至ります。ただし、従来の学科名では情報科学の専門性を高められる学習環境であることが伝わりにくいと判断し、2022年度から「数物情報科学科」へと変更することとなりました。
同様に当時の物質生物科学科も、社会の潮流と社会ニーズの変化に合わせて「化学生命科学科」へとリニューアルしました。近年はDNAに代表されるようなミクロな領域を扱う生命科学への期待が高まっており、この領域にアプローチする教員も少なくないことから、本学における教育・研究活動の実態に即した名称変更となります。
また、2学科ともに学習内容自体の見直しも行い、全学共通の教育プログラムとしてスタートしたデータサイエンス教育との相乗効果を高めていく考えです。
基礎から応用まで網羅するデータサイエンス教育
本学では、文部科学省が2021年度からスタートさせた「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)」に沿った教育プログラムを展開しています。2022年度以降の入学者は、理学部なら、学科を問わず「基礎情報処理」という科目を1年次の必修科目としています。さらに、2年次以降の応用プログラムとして、AI入門やデータサイエンス入門という科目が用意されています。
数物情報科学科であれば、とりわけ情報コースでは、ハードウェアからソフトウェアまでを網羅したプログラミング教育に基づいたデータサイエンス教育を推進し、数学コースと物理コースでも、従来のカリキュラムにデータサイエンスの知見を融合させる新たな学習体系を構築しています。
また、化学生命科学科は、近年注目されている「バイオインフォマティクス」に関わる学びを強化する方針を打ち出しており、生命科学とデータサイエンスの接点を意識しながら知見を広げ、理解を深めていく環境づくりを進めています。
さらには、データサイエンスといっても手法や用途は多種多様なため、様々な専門科目でデータサイエンスの視点を取り入れる準備を進めています。例えば、私が担当している「物理計測法」という3年次の科目では、学生が抱く日常生活での疑問の解消や社会問題の解決に向けて、どのような統計モデルやデータサイエンスの考え方に基づいてアプローチするのが適切であるかを考えます。統計学の基礎やデータを見極める力を身につけた上で、実際の統計的分析やデータの可視化といった手法を修得し、実践していくことが目標です。講義型授業などから芽生えた問題意識にデータサイエンスの知見を結び付けて、問題解決策を模索する力を高めます。
「これから何がしたいか」という“思い”を大切に
大学入試では、科目ごとの得意不得意や、模擬試験での点数、偏差値などで受験先を絞り込みがちですが、優先すべきは自分の率直な興味です。その方が受験勉強のモチベーションアップにつながるはずですし、入学後に壁に直面しても頑張れるものです。大事なのは「今まで何ができたか」よりも「これから何がしたいか」です。本学の理学部なら、幅広い学びから深い専門領域へと導いていくカリキュラムのもと、すべての教員が熱意をもって指導に当たり、学生の意欲や興味、「好き!」「勉強してみたい!」という気持ちに全力で応えます。例えば多くの学生が「社会の役に立ちたい」と話しますが、SDGsに関わる研究をはじめ、2学科それぞれで国際社会の問題解決に役立つ研究も進められていますので、やりがいは十分です。
世間では「理系は男性が向いている」という偏見も存在し、女性自身もそう思い込みがちですが、本学の理学部なら、そんな雑音をよそに興味ある研究にのびのびと打ち込むことができます。しかも、女子学生のよき理解者となる女性教員が教員全体の40%以上。建学以来「女性をエンカレッジ(元気づける、勇気づける)する大学」としての気風が根付いていますので、理系進学に不安のある女子にもぜひ本学に来てほしいと願っています。