「社会科学」と「データサイエンス」の融合で社会の変革を牽引―一橋大学ソーシャル・データサイエンス学部

「社会科学」と「データサイエンス」の融合で社会の変革を牽引―一橋大学ソーシャル・データサイエンス学部

2023年4月、一橋大学は72年ぶりの新学部となるソーシャル・データサイエンス学部を開設する。同大が長年培ってきた「社会科学」に、「データサイエンス」を融合。新しい学問領域を生み出すことで、格差や貧困などの社会課題の解決や、ビジネスの革新を担う人材の育成を目指す。教育・研究の中身や、求める学生像を探ってみよう。

文 松平信恭(大学通信)

「社会科学」と「データサイエンス」の融合で社会の変革を牽引

現代の企業は、情報化の急速な進展や国際競争の激化などの新たな課題に直面している。また、現代社会は、急速な経済発展がもたらした富の集中や地域間の不平等、温暖化や異常気象など、世界規模の問題への対応を求められている。こうした未解決として残されている問題に取り組むため、21世紀の大学では、新たな学問領域の開拓が進められている。

一橋大学が2023年4月に開設するソーシャル・データサイエンス学部は、こうした未解決課題の解決に貢献する新たな学問領域を創出するために、学問分野や文理の垣根を超えて「社会科学」と「データサイエンス」の知見や手法を融合させることを目指している。進展著しいデータ駆動型アプローチ(※)と、経済学、法学、政治学といった既存の社会科学が有するさまざまな理論を併用して、幅広い研究を行っていくことを特徴としている。

※データ駆動型アプローチ:データを元に次のアクションを決めたり、意思決定を行ったりすること

データ駆動型アプローチでできることは近年大きく拡大しているものの、社会や人間への理解なしには正確な判断を行うことは難しい。だからこそ、そこに社会科学の知見を活かしていくことが有用となる。社会科学にとっても、ビッグデータを分析する力が加わることのメリットは大きい。学問の垣根を超えて互いに補い合うことが、より強靭な研究を可能にするのだ。

大学伝統の少人数ゼミで幅広く深い学びを得る

一橋大学のソーシャル・データサイエンス学部では、社会科学や統計学、情報・AIの知識をバランスよく学べるカリキュラムを用意。社会科学とデータサイエンスを融合するための力を育むことができる。

データ分析では、株価の変動のような時系列データを分析対象とするのか、それともテキストデータや画像データを対象とするのかによって、アプローチの方法が大きく異なる。まずはそれぞれのデータ特性に応じた「正しいアプローチの方法」を学ぶことが大切であり、そのためには各アプローチの背後にある「理論の理解」が不可欠だ。学部教育においてはここまでの修得を目指す。その先の「新たな分析モデルをつくる」ことは、同時に設置される大学院への進学後に取り組むことになる。

一橋大学は、ゼミナールを中心とする少人数教育と、他学部の講義を自由に履修できることを学部教育の特色とする。これはソーシャル・データサイエンス学部も同様だ。

ソーシャル・データサイエンス学部は1学年の定員60人に対し、専任教員が18人所属する。教員1人あたりの指導人数は3〜4人で、一橋大学の他学部と比べても少ない。高い専門性を有する教員から、ほぼマンツーマンの指導を受けられることも魅力の一つだといえる。

社会科学とデータサイエンス、両方の知識やスキルを身につけて卒業した後は、実社会のさまざまなフィールドに活躍の場が広がる。社会に蓄積されたデータを活用して、官公庁における政策立案、民間企業での意思決定、起業を通じた社会課題の解決などに貢献していくことを、同学部では期待しているという。

一橋大学 ソーシャル・データサイエンス学部・研究科 https://www.sds.hit-u.ac.jp/

新たな学問分野を創出しその力を実社会で生かす

一橋大学のソーシャル・データサイエンス学部ではどんな学生を求めているのか。ソーシャル・データサイエンス教育研究推進センター長の渡部敏明教授は、次のように話す。

「一橋大学は社会科学の総合大学、つまり文系の大学ですが、本学部での学びには理系の要素も加わります。入学後は数学を学ぶ機会が豊富にあるので、数学に対して、少なくとも苦手意識のない学生を求めています」

その思いは入試制度にも現れている。ソーシャル・データサイエンス学部は他の学部よりも数学の配点比率が高く、前期日程では1000点満点中370点、後期日程では1000点満点中540点と、配点の大部分を数学が占める(詳細は下図参照)。これまで一橋大学の志願者の中心だった文系の生徒だけでなく、データサイエンスを社会で活用することに興味がある理系の生徒にも広く門戸は開かれている。

学部名に「ソーシャル」がついているのは、社会科学への応用を前提としたデータサイエンスを志向しているから。渡部教授は「数学にも社会経済領域にも関心があって、学んだことをビジネスや実社会に応用していきたい学生に来てほしい」と話す。

ソーシャル・データサイエンスは、従来の社会科学や自然科学の枠を超える新しい学問分野だ。高校までの勉強においても、科目の枠を超えて「異分野融合」で思考してみることの面白さを感じたことがあるだろう。そうした面白さを知る人にこそ、ソーシャル・データサイエンス学部での学びは向いている。教員や同級生との距離が近い小さなチームで、新しい分野を切り開いていく気概を持つ受験生にチャレンジしてほしい。

文系・理系の枠を超えて出願できる入試制度を用意

ソーシャル・データサイエンス学部の入試は数学の配点が高く、文系だけでなく理系の受験生も受験しやすくなっている。前期日程では1000点満点中370点、後期日程では1000点満点中540点を数学が占める。
2次試験で文系科目の地歴公民が出題されない点も特徴だ。ソーシャル・データサイエンス学部の前期日程では、国語、数学、外国語に加え、総合問題を出題。後期日程については、数学と外国語のみ。理系出身者でも十分に挑戦できる試験内容となっている。
一橋大学は2次試験の配点が高く、勝負は2次の結果で決まりやすい。データサイエンスや分野融合の学びに興味がある人は、文系・理系の枠を超えて検討してほしい。

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