卒業生に聞く 新たな一歩を踏み出す人たちの背中を押し、技術指導で支える「職業訓練指導員」という仕事ー職業能力開発総合大学校

卒業生に聞く 新たな一歩を踏み出す人たちの背中を押し、技術指導で支える「職業訓練指導員」という仕事ー職業能力開発総合大学校

ものづくりに関わる知識と技能に特化した濃厚なカリキュラムで、実践的な教育を行ってきた厚生労働省所管の「職業能力開発総合大学校」。
毎年、実就職率100%の実績を誇る同校は、ポリテクセンターや職業訓練校といった日本各地の職業能力開発施設でさまざまな専門技術を指導する「職業訓練指導員(愛称:テクノインストラクター)」の養成と、職業能力開発に関する調査・研究を目的に設置された。働きたいと願う人や、新たな技術を学びたいという人を技術指導で支え、就職サポートにも尽力する職業訓練指導員という仕事について、卒業生に話を聞いた。

取材 雫 純平(大学通信)

技術を教えるだけではなく訓練生の就職を支援する

―「職業訓練指導員(以後、指導員)」という仕事について教えてください。

住吉 指導員の仕事は、大きく分けて3つあります。①技術を持っていない方に、次へのステップとして技術力を提供する。②すでに技術者として働いている方に、スキルアップとしての新たな技術を提供する。③事業主からの要請に沿った研修を行い、企業の成長のためのサポートを行う。なかでも①は、仕事をしていない方が就職に向けて技術を身につけるためのサポートだけでなく、次の就職先がスムーズに見つかるように相談に乗ったり、企業とのマッチングや業界に関する情報提供をしたりもしています。

平口 職業訓練校を知らない企業もありますから、就職先の開拓という意味でも、訓練生の採用を検討してみませんか? というご案内をすることもあります。訓練校で学ぶ内容はもちろんのこと、限られた期間で技術をどこまで習得しているかについても明確に説明しています。就職のために訓練生のみなさんは頑張って学んでいるので、できるだけ選択の幅を広げてあげられたらと思っています。

また、修了した訓練生に、卒業後はどのようにお仕事をされているか、お話を聞かせていただくこともあります。アフターサポートの意味もありますが、教える内容や教え方を見直す必要があるかどうかを検討するためのヒアリングでもあります。

―お二人は、どんなところにこの仕事のやりがいを感じているのでしょうか。

住吉 新しい分野に挑戦している訓練生も多いので、知識や技術を理解するのは簡単ではありません。ある程度のところまでは理解できても、ある部分で苦戦して先に進めないということもよくあります。そういうとき、こちらからの一言やアドバイスで理解につながり、「わかってきました!」といきいきした表情を見せてくれると、やっていてよかったなと思いますね。

平口 そうですよね。建築は理解の積み重ねの部分が大きいので、ひとつのステップをしっかり理解できたら次のステップに進むといったところがあります。最初は苦戦していた訓練生も、3〜4カ月経つと理解が深まり、成長も目に見えてきます。そういう姿を見ることができるのが、この仕事の大きな喜びですね。私自身も教え方を試行錯誤しているので、前回よりも理解できた人が増えると、教える側としても成長できた気がしてうれしくなります。

―指導するときに心がけていることはありますか。

住吉 プログラミングやネットワークのカリキュラムでは、英語から派生した日本語がたくさん登場します。アプリケーションやソフトウェアなど、カタカナで表記される専門用語をいかに噛み砕き、わかりやすく伝えるかが大切だと思っています。用語として意味を教えるだけでなく、現場ではどのように使われているのかも伝えるようにしています。

平口 建築の場合は、机の上だと準備や段取りがイメージしづらいと思うので、写真なども見せながら、なぜここにこの材料を置くのかなど、具体的に解説します。細かいところまで理解できると、学ぶことにおもしろさも感じてもらえると思いますしね。理解度のチェックをするために、最初は噛み砕いてわかりやすく質問して、徐々に専門用語を入れながら質問してというふうに、成長に合わせて質問の仕方も変えています。

―訓練生の年齢層も幅広いと思いますが、その点で心がけていることはありますか。

平口 訓練生は20代から60代まで、社会人経験のある方も多いので、若いころは年上の訓練生にどう接したらいいか悩んだ時期もありました。当時は言葉遣いに気をつけたり、なるべく謙虚な姿勢でいるように努めたり試行錯誤していましたが、今はなるべくフラットに接するように心がけています。訓練生が私よりも経験豊富な場合もありますので、リスペクトする気持ちを持ちつつ、技術はしっかり教えようと思っています。

また、同じ志を持って一緒に学んでいる訓練生同士も、いい関係をつくれたらと思っています。そのため、グループワークなどコミュニケーションができる機会を積極的に設けるようにしています。

職業大の実践的な学びにしっかり取り組めば免許取得も難しくはない

―お二人は職業能力開発総合大学校(以後、職業大)を志望されたとき、すでに指導員を目指していたのですか?

住吉 私は岐阜職業能力開発短期大学校(現:東海職業能力開発大学校)の情報技術科に通っていて、職業大には3年次に編入しました。短大卒業後の進路を考えているときに、プログラム開発の仕事を目指そうと考えたことと、10代のころから教師への憧れがあったことを教授に話したところ、「開発の技術を教える仕事がある」と教えてもらったんです。私はできるだけ長く仕事を続けたかったので、産休を取っても復帰しやすいという点にも魅力を感じ、免許取得を目指して編入を決めました。

平口 私は高校時代から、将来は建築の道に進みたいという気持ちがあり、受験校の候補として先生に勧められたのが職業大でした。技術を学んで手に職をつけることができるという点が魅力的だと思いましたね。職業大について調べるなかで指導員という仕事を知ってはいましたが、そのときはまったくイメージできていませんでした。

―平口さんが指導員を目指したのは、入学されてからなんですね。

平口 もともとは、民間企業に就職したいと思っていましたが、就職活動を始める時期に先生に相談するうちに、指導員の仕事も視野に入れるようになりました。一番心惹かれた理由は、自分の時間を持てるということ。もちろん指導員の仕事が暇だとか楽だということではありませんが、労働時間が決まっていることで建築士の資格取得など自己のスキルアップなどに時間を使うことができるというのが、私にとっては大きな魅力でした。

―指導員になるには、技能ごとの「職業訓練指導員免許」が必要ですが、免許取得への道のりは大変でしたか。

住吉 私が在学していたころは、特定の授業で単位を取得すれば免許も取得できたので、日ごろからきちんと授業や実習に取り組めていれば、そこまで大変ではなかったと記憶しています。ただ、編入後に学んだ電子回路に関しては、少し苦戦したのを覚えています。半田ごてを使って電子回路を作る実技試験では、できた! と思って確認したら電気が通らなくて。もう一度やり直して無事に仕上がったのは制限時間ギリギリ。今思えば、それも楽しい思い出のひとつですけどね(笑)。

―住吉さんは、得意なプログラミングだけでなく、電子回路の免許取得にも挑戦したのはなぜですか?

住吉 プログラミングに加えて電子回路の免許も取得できれば、プログラミングコースのほかに電子回路コースの授業も担当することができます。全国の職業能力開発施設にはさまざまなコースがあるので、授業を受け持つことができる分野が多いと、働ける施設の幅も広がります。転勤の可能性も考えて、ひとつでも多く免許を取っておきたかったんです。

―平口さんは、就活の段階で指導員を目指されたとのことですが、免許は取得されていたのですか。

平口 選択科目のなかで免許取得につながるものがあったので、指導員を目指す前から、取れる資格は取得しておこうという気持ちで履修していました。設計や構造計算は建築には欠かせない分野ですが、覚えることも非常に多いので授業についていくのに必死でしたね(笑)。寮で一緒だった友達にわからないところを教えてもらいながら、なんとか乗り切りました。

―免許を取得して初めて、指導員の採用試験が受けられるということですが、採用試験はいかがでしたか。

住吉 私が受験した年は指導員を希望する人が非常に多く、課内の指導員になれる枠に対しての応募人数が2倍以上だったので、学内での選考試験を経て、採用試験を受けるという流れでした。ゼミの教授が「指導員になりたい理由を伝えられるようにしておきなさい」とアドバイスしてくださったり、採用試験の小論文対策をしてくださったりしたのはありがたかったですね。練習としてさまざまな問題に対する考えを整理して文章化していたことが、面接でも役に立ちました。

平口 私も採用試験のときには、担任の先生や就職支援アドバイザーの方に助けていただきました。試験問題や小論文の出題傾向を教えていただいたり、練習として書いた小論文を添削してもらったり、きめ細かく指導していただきました。

職業大での生きた学びを訓練生に伝えながら、自らも勉強し続ける

―指導員として働く今、職業大での経験や学びが役に立っていると感じることはありますか。

平口 在学中に施工まで体験できたのはよかったですね。4坪ほどの木造やRC(鉄筋コンクリート造)の建物を実際に作ることで、道具の使い方や作り方を体でおぼえることができましたし、段取りを体験することで、細かいところまでイメージできるようになりました。教えるときには、自分がどうやって教わっていたかなと、学生時代のノートを見返すこともあります。

住吉 実習や実験をたくさん体験できたよさを、私も日ごろから実感しています。職業大の実践的な学びは、現場でもすぐに役立つものです。私の場合は、ゼミの教授が文章指導も厳しい方だったので、そこはかなり鍛えられました。今は、教材作成をはじめさまざまなシーンで文章を書く機会も多いですし、訓練生の履歴書や職務経歴書を添削することもあるので、厳しく指導していただいてよかったと思っています。

―最後に、今後の目標や展望についてお聞かせください。

住吉 今まで指導した訓練生のなかには、訓練校で学んだ専門分野が自分には向いていないと判断して、異なるジャンルに就職された方もいらっしゃいます。適正を理解するのはよいことですが、もう少しわかりやすく指導できていたら違ったかもしれないと思ってしまうことがあります。学んでいくなかで「やっぱり目指したい!」と思ってもらえるような指導を追究していきたいですね。タブレットなども一般化していますが、教えるのに効果的なツールも積極的に使っていけたらと思っています。

平口 一人ひとり理解度も異なるので、全員に理解してもらうのは簡単なことではないと日ごろから感じています。常に一番いい伝え方を考えていますが、より理解してもらえる授業づくりを心がけていきたいですね。ほかの先生のやり方も参考にしながら、教え方もアップデートしていく必要があると思っています。私が目指しているのは、現場で話されていることが7〜8割は理解できるレベルまで成長してもらうこと。企業で必要な知識やスキルについても常に情報を追いかけ、教材の内容も見直していきたいです。

住吉 技術はスピーディーに進化していきますし、それに伴ってニーズも変化していきます。今のトレンドに敏感に、現場で生かせる内容を教えていきたいですね。そのためには、私たちが先んじて新しい技術を学んでいかなくてはなりません。年齢とともに新しいことを覚えるのは大変になってきますが、貪欲に勉強し続けたいと思います。

平口 指導員になって痛感していますが、深いところまで理解していないと注意喚起も含めて実践的な内容を教えることはできません。私も時間をつくって学び続けたいですし、それを指導に生かしていきたいですね。

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