リテラシーレベルから応用基礎まで網羅する「AI・データサイエンス全学プログラム」-中央大学

リテラシーレベルから応用基礎まで網羅する「AI・データサイエンス全学プログラム」-中央大学

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中央大学では文系理系すべての学部、すべてのキャンパスの学生が受講できる学部間共通科目「AI・データサイエンス全学プログラム」を2021年度からスタートさせた。目指すはAI・データサイエンスの知識や技術を、各学部学科における自らの専門分野に応用・活用できる人材の育成だ。商学部教授であり、同プログラムを開発した中央大学AI・データサイエンスセンターの副所長を務める武石智香子副学長に詳細を伺った。

文理それぞれの専門性とデータリテラシーを融合させる

武石智香子教授
AI・データサイエンスセンター副所長
全学連携教育機構長(副学長)

―「AI・データサイエンス全学プログラム」の設置背景や特徴を教えてください。

中央大学では、文系理系を問わず学内において広くAI・データサイエンス教育を推進するため、2020年度にAI・データサイエンスセンターを設立しました。同センターには、データサイエンスや統計、AIなどに関する各学部の専任教員が数多く所属しています。ビジョンは、「AIとデータサイエンスを活用して課題を発見し、問題解決することで、社会の発展と人類の幸福に資する人材を養成する」というもの。これを拠りどころに教職員が広く連携してプログラムの開発に着手し、2021年度に「AI・データサイエンス全学プログラム」の授業がスタートしました。

具体的には、基礎的な素養を身につけるリテラシー科目と、応用レベルの入口となる応用基礎科目とで構成されています。リテラシー科目は、AI・データサイエンスが社会にもたらす価値や、デジタル技術が行き渡った社会における諸課題について、俯瞰的かつ深い知識を身につける科目です。応用基礎科目は、ツール科目と演習科目に分かれ、現代社会で必須となる実践的なスキルを養う科目群となっています。

―文系学部が多い中央大学が全学的にAI・データサイエンス教育に取り組む意義をお聞かせください。

現代社会では、アカデミックな研究活動からビジネス分野、社会問題の解決まで、幅広くAI・データサイエンスの知見を適用させることで、よりよい社会を構築していくべき段階にあります。活用すべき分野は多岐にわたるからこそ、基礎となるリテラシーを身につけ、適切に使いこなせる知識やスキルを修得する大切さは、文系理系を問わず共通するものです。例えば、デジタル技術とは無縁と考えられてきた職人の世界でさえ、後継者の不足している職人技の継承のためにAIを用いた動画解析や記録が進められるなど、これまで不可能だったことを可能にするためにAI・データサイエンスの技術が駆使されているほどです。

一方で、AI技術を社会に適用させようとすると、ときに既存の法律や商慣習、文化、思想などが制約として立ちはだかるケースもあります。文理を問わず所属学部での専門性は、社会が納得できるAI・データサイエンス活用の実現に有用です。目指しているのは、AI・データサイエンスの知識を自らの専門分野へ応用・活用することができる人材の育成なのです。

もちろん、開発系の技術者を志す学生や、マーケティングでのデータ活用を想定する学生など、学生が描く将来像やモチベーションはさまざまですが、職種にかかわらず一定のスキルが将来に役立つことはいうまでもありません。企業のホームページを例にすれば、全体の構造やシステムを制作するのは専門の開発者だとしても、画像や文字情報などの一部の更新作業は、広報や営業といった現場のスタッフが担っていくと考えられます。そのためにも、一定の技術力は不可欠です。別の例を挙げれば、テレビの製造方法まで知る必要はないものの、せめてリモコンの操作方法までは知っておくべきでしょう。データサイエンスは、もはやそのレベルまで社会に広がりつつあるということです。

知識を得てから技術を修得する段階的な学習プロセス

―リテラシー科目について詳しく教えてください。

リテラシー科目は、「AI・データサイエンスと現代社会」と「AI・データサイエンス総合」の2科目を1年次から履修できます。

「AI・データサイエンスと現代社会」は、社会でいかなる変化が起き、なぜAI・データサイエンスを学ぶ必要があるのかを理解した上で、データ活用時に留意すべき倫理観や、セキュリティ技術の概要、プライバシーを保護するための法整備の必要性なども学びます。さらに、研究でデータ活用を実践している教員からは、実際の分析技術の基礎や、現代社会でのデータ活用事例、将来に向けた重要性なども紹介します。この「AI・データサイエンスと現代社会」は、文部科学省が提示しているリテラシーレベルのモデルカリキュラムに準拠した内容となっています。

一方、「AI・データサイエンス総合」では、初回に樋口知之 理工学部教授(センター所長)から機械学習の仕組みやその適用分野として、画像認識における識別方法や、トライ&エラーを経て進められる強化学習の手法などを紹介。その後、学外の実務家4名をお招きし、各3回合計12回の講義が展開されます。3回のうち、1回目には企業が直面している経営課題や、課題解決に必要な背景知識を示し、2回目には、課題解決に向けてどのようにデータが活用され、どのような効果が出ているのかといった事例を紹介します。ここまでは動画によるオンデマンド配信の授業となります。最後の3回目は、対面とオンラインとのハイブリッド形式とし、リアルタイムで学生からの質問を受けつけ、実社会での経験に基づく臨場感のある講義を受けることができます。

身につけたスキルを証明するオープンバッジシステムを採用

―リテラシー科目の次に履修するのが応用基礎科目ですね。

応用基礎は、1年次から開講する「ツールⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ」と、2年次以降に履修可能な「演習A・B・C」があります。

「ツールⅠ」は、主にデータ分析経験の少ない文系学生向けに設計しており、多くの学生が普段から使用しているエクセルと、2021年度は統計分析ソフトであるSPSSの理解と習熟度を高めます。エクセルではVBA(Visual Basic for Applications)というプログラミング言語を使用した“動くグラフ”の作成にも挑戦しながら、データ加工と分析、可視化による情報の整理・共有作業の効率化を図ります。

「ツールⅡ」では、データ処理やデータ分析、WEBアプリの構築に向けた基礎を身につけるため、汎用的なプログラミング言語であるRubyと、Ruby on Railsを学び、最終的にはアプリ制作にも取り組みます。

「ツールⅢ」では、ビッグデータの分析ツールであるBI(Business Intelligence)ツールによって何が実現可能なのかを学習。データ分析の結果を適切にまとめる方法を学びます。その後、データサイエンスにおける基本的なプログラミング言語であるRや、機械学習の基礎も学びます。

「ツールⅣ」では、前半でスマートフォンアプリやインスタグラムなどにも用いられているPythonというプログラミング言語の基礎を学習。後半はデータベース言語であるSQLを使い、データベースの作成や、大規模なデータベースからのデータ抽出の方法を学びます。

―2022年度から始まる「演習」についてもお聞かせください。

演習は、2年次にA、3年次にB、4年次にCという3段階で高度なスキルを修得していく「AI・データサイエンス教育プログラム(iDSプログラム)」として位置づけています。学部や学年を超えて切磋琢磨するPBL(Project Based Learning)形式の導入や、学外のコンペティションにも挑戦していく予定です。

PBLでは、例えば地域創生にデータを活用するために、学部を横断したチームを組むこともあるでしょう。解決策のアイデアだけでなく、過疎化や人口減少を引き起こす要因や、なぜ地域創生が必要なのかという根本的な問いを解き明かすためにもデータを活用していってほしいと考えています。

また、このプログラムを修了し、各学部の既設関連科目も受講して所定の単位を取得した学生には、修了証とともにオープンバッジを付与するシステムを採用します。これは生涯にわたるデジタルバッジとして、世界に向けて自らのスキルを提示していけるものです。

AIをブラックボックスにしてはいけない

―履修した学生の反応や、今後さらに意識すべきポイントをお聞かせください。

2021年度は、リテラシー科目の「AI・データサイエンスと現代社会」の受講者が1000名を超え、約9割が単位を取得しました。また「AI・データサイエンスツールⅠ」では、定員の7倍を超える履修希望がありました。いずれもオンデマンド授業ではありましたが、「スキルを身につけたい」という強い意欲を感じています。何らかの情報発信をする際にはエビデンスを示す必要があり、その際にはデータ活用が不可欠であることを、学生が認識してくれている実感もあります。

ただし、物事を解釈して判断するためにデータ分析を行うAIは、ある意味でブラックボックスにもなりかねません。だからこそ、AIのバックグラウンドで動いている統計処理など、外からは見えないブラックボックスの部分の仕組みを知っておく必要があることを、学生には認識してほしいと考えています。

また、データを分析すれば将来を予測できるという誤解が生じることもあります。分析のための条件が変わらなければ、ある程度の予測は可視化されますが、条件はあくまでも過去のもの。社会は絶え間なく変化し続けています。しかも、過去のデータは社会体制の影響を受けていることもあり、例えば女性差別のある社会では、そもそも女性が統計の対象に含まれていないケースもあります。そういったデータから導き出されるのは、あくまでも女性が介在しない偏った解に過ぎないのです。とはいえ、そこに気づくことができれば、公平性とは何かを考え直すきっかけにもなるでしょう。数字の意味や背景にまで考えをめぐらせることが重要であることを学生は意識しておくべきだと思います。

プログラミング言語は世界共通言語である

―最後に、受験生へのメッセージをお願いします。

2020年度からは小学校でプログラミング教育が必修となり、2022年度からは高校で「情報」が必修化されます。AI・データサイエンスの普及に伴い、従来の学校教育の当たり前、そして社会の当たり前が変わっていくなかで、本学のAI・データサイエンス教育も柔軟に変わり続けていく必要があると考えています。まずは2022年度、広い学生層向けの科目の定員を倍増させ、プログラムの内容も進化させていきます。

また、近年の大学教育では、グローバル社会に役立つ外国語運用能力の向上が重視されていますが、言わばプログラミング言語も世界共通言語です。AI・データサイエンスの知見を備えた人々が協力することで世界を好転させ、SDGsに代表されるグルーバル課題の解決に挑んでいくことも可能でしょう。そうした高い志や知的好奇心、探究心を持って中央大学に入学し、AI・データサイエンスの学びにチャレンジしてくれることを願っています。

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