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関西学院大学は2021年4月、理系4学部を新設した。時を同じくして、総合政策学部もカリキュラムを再編。これらのダイナミックな改革の舞台となっているのが、神戸三田キャンパス(KSC)だ。新たなKSCのコンセプトは「Be a Borderless Innovator―境界を越える革新者たれ―」。この言葉の通り、文理分野横断のさまざまなプログラムが導入され、従来にはない教育や活動が展開されている。KSCにおける改革の狙いと現状について、加藤知KSC担当副学長に話を聞いた。
困難にあえて挑むイノベーターを育成する
―「Be a Borderless Innovator―境界を越える革新者たれ―」というコンセプトに込めた狙いをお教えください。
現在、世界はさまざまな課題を抱えています。それらを解決し、社会に貢献できる人材を送り出すことは関西学院大学の使命です。社会の課題に目を向けると、それらは変化し、複雑化しています。そのため、これまでの教育やノウハウでは対応が難しくなっています。そこで求められるのが、これまでとはまったく違った発想や技術、仕組みを生み出して課題解決に取り組むイノベーションとよばれる革新です。
イノベーションは従来の枠組みの中からは生まれてきません。異質なものの組み合わせ、すなわち複合的な知から生まれてきます。これが、「ボーダーレス」に込めた思いです。
しかし実際のところ、ボーダーを越えることは非常に難しいです。誰しも、自分の領域内でとどまっている方が楽だからです。しかし、その困難にあえて挑むイノベーターを育成するのが、本学の狙いです。
そもそも、なぜ困難を省みることなく境界を越えていくのかというと、それは「他者」のためです。自らを鍛えることが社会のためにつながるという奉仕の精神が根底にあるから、チャレンジができるのです。これは、本学のスクールモットーである「Mastery for Service(奉仕のための練達)」に他なりません。ボーダーレスにチャレンジし、イノベーションを起こしていこうというKSCの取り組みは、まさにスクールモットーの体現だと言うことができるのです。
――文理分野横断の取り組みがKSCの特色のひとつです。
ボーダーレスを象徴する取り組みが、文理分野横断の学びです。詳細は後述しますが、とてもユニークな取り組みが行われています。カリキュラムやプログラムのさらなる充実に加え、学習環境を整備し、KSCならではの学びを体験してもらいたいと考えています。
―「Camping Campus」に代表されるような、企業と連携したユニークな取り組みも行われています。
アウトドア用品のトップブランドであるスノーピーク社とは、同社の掲げる「人間性の回復」という考えが本学の建学の精神と共鳴するところがあり、KSCを舞台にして連携した取り組みを始めることになりました。「Camping Campus」は、教育にキャンプの手法を取り入れた取り組みです。キャンパス内でキャンプを行うほか、焚火を囲んだイベントも開催しました。ここでは、夜のキャンパスという日常とは異なるシチュエーションで、異なる学部の学生やスノーピーク社の社員、さらには本学学長や三田市長も交えながら議論を行いました。これもまたボーダーレスを象徴する取り組みであり、非日常の経験が刺激となっているほか、新たな発想や目標を得た学生も多いです。
スノーピーク社との連携は、学内でのペットボトルの削減によるSDGsへの貢献という具体的な取り組みにまで発展しました。KSC内では、年間約27万本のペットボトルが排出されていました。これに対して、学生グループ「CAMP×US」も加わって、スノーピーク社と協働でマイボトルを開発。さらに、学生と企業とのマッチングサービスを行うエンリッション社とも連携し、KSC内に「BiZCAFE」と名付けられたカフェを設置。学生がマイボトルを持参することで無料でアイスコーヒーや紅茶等のドリンクを得ることができ、なおかつ企業情報に触れ、自身のキャリアについて早い時期から考えられる仕組みを構築したのです。10万本のペットボトル削減を目標に掲げたこの取り組みは、2021年7月時点でKSCの全学生のうち41%がマイボトルを所有するまでに浸透しています。また、スノーピーク社、エンリッション社、関西学院大学、学生という関係する4者それぞれにメリットがある「四方良し」のこの仕組みは、ビジネスモデルとしても高い評価を獲得。7月に行われた「日経ウーマノミクス2021シンポジウムSDGs座談会発表コンテスト」では住友電気工業最優秀賞を受賞しました。
―ハード面での拡充も計画されています。
2022年に新棟が完成する予定です。ここには事務機能を集約させ、より効率的に学生を支援する体制を整えます。また、屋上には天体望遠鏡を備えたドームを建設します。本学の理学部物理・宇宙学科は研究力に定評がある教授陣が揃っているうえに、電波天文学、赤外線天文学、X線天文学の宇宙物理主要三分野の研究室を有しています。学内に天体望遠鏡を設置することで、地域との交流も図ります。
2025年にはキャンパス近くにインキュベーション施設と学生寮を併設する複合施設を開設します。地域に開かれ、地域でのビジネスをサポートする拠点にする計画です。そこでは、起業家と学生との交流が生まれるでしょう。さらに、インキュベーション施設を利用して起業していく、進取の気性に富んだ学生が育っていくと考えられます。寮にはKSCで学ぶ外国人留学生も入る予定ですので、国境を越えた交流や、そこから生まれる社会課題の解決に貢献するイノベーションにも期待ができます。KSCのコンセプトを具現化しながら、地域の活性化にも貢献できる施設になればと考えています。
―KSCの今後の展望をお教えください。
チャレンジするキャンパスであり続けたいです。世界には課題が山積しています。それらに対して挑んでいくことが、KSCを活性化させると考えています。
チャレンジにあたっては、しっかりとした基盤を持っていることが大切だと感じています。基盤とは、立ち返るべき原点とも言えます。それは本学の場合、スクールモットーです。新しいことに挑戦するときには、不安や迷いもつきまといます。そのとき、スクールモットーに照らし合わせて、進むべき道が正しいのかを判断できるのです。このことは本学ならではの強みであり、安心してチャレンジができる土台になっています。
―高校生へメッセージをお願いします。
KSCは変化と成長を続けるキャンパスです。また、ボーダーレスとは、境界がないことで、どこまでも可能性を追求できます。それがKSCです。非常に魅力に満ちていますが、変化や成長、境界を無くすことには、ときに苦しみもともないます。しかし、その苦しみを乗り越え、挑戦する先にこそ喜びがあります。夢や目標の実現があります。そういった意欲のある学生とともに学びたいと考えています。KSCには先端的な研究設備をはじめ、恵まれた環境が整えられています。それらを「使ってやろう、生かしてやろう」という積極的な気持ちを持って、ぜひ本学へ入学してください。
理系学生がビジネスと課題解決のマインドを養い、研究と社会を結びつけて考える「BiZCAFE」
BiZCAFEの運営を共同で行うエンリッション社は、全国で学生向けサービス「知るカフェ」を展開しています。キャリアを考えることを核にして学生同士が交流したり、「Meetup」と題された企業と学生との交流会が開催されている「知るカフェ」のノウハウが、BiZCAFEではKSCの理系学生向けにバージョンアップされています。例えば、企業が直面するさまざまな課題を「BiZCLASS」というコミュニティを通して、学生は自らの専門分野が、ビジネスにどう役立つかを社会人と共に考え実践することができます。研究室を飛び出し、理系の枠にとらわれないそれらの活動により、ビジネスマインドや社会に対する問題意識を育みながら、自らの研究と人々の暮らしをつなぎ合わせて考える場になることが、BiZCLASSの大きな特徴です。さらに、この仕組みを無理なく継続的に運用する“仕掛け”であり、地球環境の保全にも貢献できるというBiZCAFE利用のもう1つの動機づけとして、スノーピーク社と共同開発したマイボトルによる無料ドリンクサービスを導入。キャンパスで排出するペットボトル削減に貢献しながらビジネスマインドを養い、自らの研究やキャリアについて考えられるという多方面にわたって効果を発揮する仕組みは、「日経ウーマノミクス2021シンポジウム SDGs座談会発表コンテスト」で住友電気工業最優秀賞を受賞し、ビジネスモデルとしても高い評価を受けました。
戦略的に自分の“幅”を広げていく分野横断型教育システム
文系・理系や学部などの専門分野の垣根を越えた学びは、KSCの最大の特徴とも言える。その詳細を見てみよう。
4つのプログラムからなるKSC分野横断型教育システム
KSCのボーダーレスな学びは、「KSC分野横断型教育システム」にて習得することができます。同システムは、①KSC分野横断型教育プログラム、②SDGs実践入門、③KSCアントレプレナー育成プログラム、④SPring-8活用プログラム、という4つのプログラムから構成されています。なかでも中心的な役割を果たす①のKSC分野横断型教育プログラムでは、理系4学部と文系の総合政策学部が各学部の基盤となる科目を選定。学部の枠を越え、学生の興味や目標に応じて自由に履修できる仕組みになっています。
変化の時代への対応力・適応力を養う
分野を横断して学ぶ狙いは、戦略的に自分の幅を広げていくことです。現在のように変化の激しい時代においては、学生時代に学んだ1つの専門領域だけで長い社会人人生を全うすることは難しくなっています。自分の専門分野に軸足を置きながら、文理・分野の垣根を越えて興味ある領域の知識・技術を身につけておくことが、変化に対する対応力や柔軟性を養ってくれるのです。
もちろん、一般教養科目に代表されるように、他分野の授業を履修できる仕組みは従来からありました。しかしどうしても単位を修得することが目的になってしまい、あまり有効活用できていませんでした。それに対してKSCの分野横断型教育システムでは、カリキュラム設定や日頃の情報発信による学生の意識改革を通じて、より戦略的に専門以外の学びに取り組み、変化に備える引き出しを増やしていくことを狙いにしています。狙いを持って履修する科目を選んでいくので、必ずしも、「履修する科目が増える」というわけではありません。専門領域の学びは従来通りのまま、効果的に知識を得ていく仕組みとも言えます。
文系学生も世界有数の実験施設で学ぶことが可能
④のSPring-8活用プログラムを例に、分野を横断した学びの現状や将来への意味を考えてみましょう。
SPring-8とは、兵庫県佐用町にある世界最高性能の放射光を利用できる大型実験施設です。関西学院大学はSPring-8を専有して実験できる権利を企業と共同で保有しており、教員を中心にして活発に研究利用が行われています。これは、私立大学としては非常にまれなことです。この恵まれた環境を活かし、通常は限られた研究者しか利用できない最高峰の実験施設を教育プログラムの中に組み込み、文系の学生でも参加できるようにしたのが、SPring-8活用プログラムです。
プログラムではX線や放射線に関する事前学習から始まり、SPring-8での実験、その後のデータ解析と、研究者たちの一連の取り組みを実際に経験します。文系学生がこの経験をすることは、メーカーなど理系分野の企業で働くうえで役立つ知識になるだけでなく、基礎研究への投資や研究者のマネジメントなど、経営判断を行う際の重要な土台になると考えられます。もちろん、短期的なメリットとしては、実験機器メーカーなど、SPring-8に通じる分野での就職に大きなアドバンテージをもたらしてくれると考えられます。
教員の融合も進めることで唯一無二の教育研究環境に
文理・分野横断型の学びにおいて、現在注力しているのは、学生への浸透です。いくら充実した仕組みを整えても、それが学生に理解され、活用されなければ効果を発揮しません。そこでまず、日頃からの丁寧な情報発信と説明に力を入れています。加えて、イベントなどを開催し、集中的な告知も行っています。最近では教育系YouTuberのヨビノリたくみ氏とクロスセッションをライブで行いました。YouTubeで配信した動画は在学生のみならず、高校生や保護者からも大きな反響がありました。
学びと研究の文理・分野横断を進めるためには、教員同士の分野を越えた融合も重要なテーマです。関西学院大学には、個々の分野でたいへん質の高い研究を行っている教員が多数在籍しています。それらの教員が互いの取り組みや問題意識を共有することで、イノベーションを起こしていく唯一無二の教育研究環境が生まれます。すでにオンラインでのポスター発表などが行われており、今後は、対面での交流も促進していく予定です。