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突然の「実技試験中止」。教員採用試験受験者に困惑の声が広がる
年初から始まった新型コロナウイルス感染症の影響は未だに収まることなく、多くの高校生が休校や夏休みの短縮、行動の制限など公私にわたって不自由な暮らしを強いられている。このような「コロナ禍」が、実は今年の教員採用試験にも大きな影響を及ぼしていたことをご存知だろうか?
教員採用試験の内容は自治体ごとに異なるが、一般的に筆記試験や面接を中心とした一次試験と、グループディスカッションや模擬授業などの実技試験を課す二次試験とに分けられている。
しかし、今年は感染症防止の観点からソーシャルディスタンスが取りづらい二次試験の方式を大幅に変更している自治体が続出している。その現状を、教員養成大学として有名な岐阜聖徳学園大学教育学部の水川和彦教授に聞いた。
「今年度は殆どの自治体が集団討論などの『実技試験を行わない』という方針を打ち出しています。例えば岐阜県では一次試験は筆記と集団面接、二次試験は個人面接、プレゼン面接と論文のみとなりました。名古屋、横浜など大都市圏の教員採用試験も基本的な流れは同様です」
しかも、変更が決まったのは出願直前の5月。急に実技試験が無くなり、結果的に筆記試験と面接試験の配点が高くなったことで、それまで実技試験に力を入れていた学生の中には困惑が広がっている。不安に駆られた学生をフォローするための対策として水川教授は次のよう話す。
「本学では、すでに4月からオンラインツールを活用して学生に模擬面接の機会を提供していました。さらに6月からは感染症対策を徹底した上で学生の入構を認め、対面での模擬面接も再開し、学生の不安解消に全力で取り組んでいます」
このように、コロナ禍に際して大学が積極的かつ柔軟に学生をサポートできているかどうかは、今後の教員養成系大学の実力を表す重要なポイントとなるだろう。
これからの教員採用試験はどうなるのか?
それでは来年以降の教員採用試験は一体どのようなものになるのか。
「正直、予想はつきにくい状況です。もし、今年のようなシンプルな試験で教員の質が保てるのであれば試験は今後簡素化していくでしょう。しかし、子どもの未来を育てるという教職の崇高な使命に鑑みると、実技試験のような『総合的な教師としての指導力をみる』場がこのままなくなるとは思えません。例えば個人面接の時間を長くしたりプレゼンテーションを工夫したりするなど、何らかの形でその人の教師力を知るための試験科目は残り続けると考えています」(水川教授)
今年の科目変更はあくまで暫定的な処置で、コロナ禍の状況に合わせて試験内容なども再整備されるという認識だ。しかし、教員に高い専門性と技能(人物像)が要求されることは変わらない。教員志望者は引き続きその両面を磨き続ける必要があるといえる。さらに、今後の教員採用試験で新たに加わる可能性のある要素を水川教授はこう予想する。
「地震やコロナ禍に伴い、教員の危機管理能力やオンライン授業などを行うICTスキルなど、今の時代の教員に求められるスキルを測る新しい試験科目ができるのではないでしょうか? 特にICTスキルは学校によってばらつきがあるのが現状で、格差が生じています」
あらゆる社会に対してそうであるように、コロナ禍は教員の働き方にも変化を迫る。しかし、その先行きはまだ不透明。これからの教員志望者は、今まで以上に教員採用試験や教育現場の動向をチェックし、情報をアップデートしていく必要がありそうだ。今後の大学選びにおいては、教育現場に近く最新情報をキャッチしやすい環境が整った大学を選択することが重要になってくるだろう。