企業から生まれた大学ならではの実学主義の学びとは―流通経済大学

企業から生まれた大学ならではの実学主義の学びとは―流通経済大学

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流通経済大学は、世界有数の総合物流企業である日本通運株式会社の支援により1965年に開学した、わが国最初の産学協調型大学だ。企業から生まれた大学らしく、実学主義の伝統をもつ。本稿ではその学びと特徴について紹介する。

実学主義を象徴する多彩な業界からの寄付講座

高度経済成長の真っただ中だった1965年、物流・流通部門の整備を急務とした産業界の要請により、日本通運株式会社の支援を受け誕生したのが流通経済大学だ。開学当初は経済学部経済学科のみの単科大学だったが、半世紀以上の歴史を経て、新松戸と龍ケ崎の2キャンパスに5学部9学科5大学院研究科を擁する社会科学系の総合大学として発展した。「企業から生まれた大学」として実学主義の精神は、今も教育の根底にある。その教育内容を具体的に見ていこう。

流通経済大学の実学主義の精神を象徴するのは、企業寄付講座だ。企業活動の第一線で活躍するプロたちを招き、その生の声を学生に届けている。講座例としては大学の創設に関わる日本通運株式会社の寄付講座「社会生活と物流」がある。現役社員が豊富な実務経験から「物流が日常生活にどう関わっているか」を徹底解説する。発見と驚きに満ちた講座で、社会を動かすロジスティクスの面白さを実感できると評判だ。他には、全国通運連盟による「鉄道貨物輸送の役割と未来」、野村證券株式会社による「資本市場の役割と証券投資」など、幅広い業界から多彩な講座を揃えている。就職を考える上で役に立つのはもちろん、これらの講座に刺激を受け、在学中に起業した学生もいるほどだ。

実社会で直面する、答えの用意されていない課題への解決力を磨く場として用意されているのは「全員ゼミ制」だ。その名の通り、流通経済大学では全ての学生が入学の翌日から4年間、必ずゼミに所属する。学生主体で、各人が発表や意見交換をしながら興味関心のあるテーマに取り組んでいく。実行力や問題解決力を磨くにあたり、発言回数を増やすことを重視しており、「ゼミの恥はかきすて」をモットーとする。出席するだけでなく、積極的に議論に参加する姿勢を全員に求めていることが特徴だ。

充実したキャリア教育と就職支援で高い就職力を発揮

大学で身につけた能力を正しく社会で役立たせるために、キャリア教育を充実させている。

まず入学直後は大学生活に慣れる準備期間として「RKU WEEK」を設定。ゼミ仲間や先輩との交流企画を通して夢や目標を語り、社会で必要なコミュニケーション能力を鍛えていく。

1・2学年は「キャリアデザイン」「キャリアマネジメント」などの科目を受講する。自分自身と向き合い、社会の状況についても学びながら自らが進む道を探っていく。目標が見つかればそこに向けて学びを深め、資格取得や留学などにもチャレンジしていく。そして3学年は就職活動に向けた本格的な準備をする期間と位置づけ、「職業選択論」を受講する。就職活動に必要な知識や能力、技術を身につけながら自信をつけていく。

キャリア科目について、実際に受講した学生は、こう話す。

「私は『キャリアマネジメント』を受講しました。この授業を通じて学んだことは、積極的に行動することの大切さです。大学時代にさまざまなことにチャレンジしてみようという気持ちが高まりました。そしてチャレンジすることで得られた経験を通して視野が広がり、就職活動にも役立つのではないかと感じています」(社会学部国際観光学科3年生)

以上のような体系的なキャリア科目に加え、各業界のエキスパートである専門スタッフによる手厚いサポートも特徴の1つだ。一例として、運輸業界では元日本通運㈱海外現地法人社長・元日本通運㈱航空支店長、金融業界では元常陽銀行支店長がスタッフとして相談に応じる。該当する業界の志望者にとってはこれほど心強いことはないだろう。「企業から生まれた大学」としての強みはこんなところにもあるのだ。

課外活動に打ち込むことが就職に好影響をもたらす

課外活動が非常に充実しているのも大学の魅力の1つだ。体育系、文化系ともに様々な部活・サークルが活躍している。サッカー部、硬式野球部、ラグビーフットボール部など7つの体育系クラブはスポーツ重点部に指定されており、プロ選手や日本代表選手を多く輩出している。スポーツ重点部に所属する学生の多くが所属するスポーツ健康科学部の今春卒業生の実就職率(※1)は90.5%と高いことから、課外活動に打ち込むことが就職に好影響をもたらすといえるかもしれない。

最後に、生徒を送り出す進路指導教諭の立場として大きな心配の種であろう、このコロナ禍における大学の対応について見ておこう。本稿を執筆している8月31日現在、感染症拡大防止対策として2つのキャンパスはともに入構制限を実施しており、前述の課外活動も残念ながら原則活動禁止だ。20年春学期は、全ての授業をオンラインで行った。秋学期に関しては、大部分の授業をオンラインで実施しつつ、ゼミや実技科目をはじめ可能なものについては感染防止対策を徹底しながら対面授業を行う方向で検討を重ねている(※2)。オンライン授業対応への経済支援策および学生の学習意欲向上の支援策としては、「経済支援RKU学習環境整備奨学金」を創設。自宅通学生には8万円、自宅外通学生には10万円を給付した。安全を担保しながらも学生の学びの機会を最大限確保したい大学の姿勢が表れている。今後も社会情勢がどのように変動するか全く不透明だが、安心して生徒を送り出せる大学の1つといえる。

※1 実就職率=就職者数÷(卒業生数−大学院進学者数)×100で算出
※2 大学ごとの感染症対策は日々更新されるため、大学の公式webサイトなどで最新の情報を確認のこと。

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