【東京農業大学】「化学」を身につけ、農学の枠を超えた 生命科学に応用

【東京農業大学】「化学」を身につけ、農学の枠を超えた 生命科学に応用

東京農業大学は、6学部23学科を擁する農学系の総合大学だ。2017年に開設した生命科学部は、生命を理解し、育み、守り、人類の未来を創造するバイオサイエンス学科、原子・分子から生命・生態系を化学する分子生命化学科、微生物が活躍するミクロの世界を先端科学で解明する分子微生物学科の3学科に分かれている。今回は、その中から分子生命化学科に注目。東京農大ならではの生命科学の学びとはどのようなものだろうか。

2つの「カガク」に込められた思い

東京農業大学生命科学部の中に、分子生命化学科という学科がある。まず目を引くのは、「カガク」の文字が学部名【科学】と学科名【化学】で異なっていることだ。化学は科学の1分野であるから、広く生命を学ぶ生命科学部において、分子生命化学科では生命現象を化学、つまり原子や分子のレベルで理解しようという思いが込められていることがわかる。

農業大学と化学とは一見すると意外な組み合わせに思えるかもしれない。実は1910年にビタミンB1を発見した鈴木梅太郎が在籍していたことを端緒に、東京農業大学には化学の研究に関しては100年以上の歴史があるのだ。分子生命化学科はこの伝統を受け継ぎ、化学を徹底的に学ぶ内容となっている。分子生命化学科の浦井誠准教授は、こう話す。

「生物は細胞から、細胞は分子から成り立っています。細胞の中には、遺伝子である核酸やタンパク質などの他、高校では扱わない様々な種類の分子が含まれています。これらの相互作用を理解するためには、化学の知識が非常に重要なのです。分子生命化学科では、化学の基礎をしっかり身につけ、農学の枠を超えた生命化学に応用していきます」

生命の秘密を解き明かし社会に貢献する2分野5研究室

分子生命化学科の研究内容は、有機化合物を自由にデザインし合成する有機化学分野と、生命現象に関わる物質を解析し、その機能や利用に着目する分子機能解析学分野の2分野に分かれる。さらに、有機化学分野には分子設計学と有機合成化学、分子機能解析学分野には天然物化学、分析化学、生命高分子化学と、計5つの研究室が配置されている。それぞれの研究室が大小合わせて様々な分子を対象に、社会の役に立つ高機能な物質を発見、合成している。

「自然界から機能性分子を探索し、構造決定をします。これを有機合成または酵素合成し、さらに高機能の分子に改変していきます。これらと標的タンパク質などとの相互作用を調べることで、薬、農薬、化粧品、材料など様々なものを作り出すことができるのです。生命の秘密を化学で解き明かし、社会に役立たせることが我々の研究の意義であると捉えています」(浦井准教授)

浦井誠准教授
生命科学部分子生命化学科

東京農業大学ならではの化学の学びとは

次に、教育面についてみていこう。1、2年次はまず化学、物理、数学といった基礎となる科目を重点的に学習し、学問の土台を整えていく。実学を重視する東京農業大学らしく実験科目が豊富に用意されており、1年次後期より5つの研究室全ての実験実習を履修することになる。有機化学や無機化学、低分子から高分子と幅広い化学を学びながら、3年次後期より各研究室に配属され、より専門性を高めていく。

東京農業大学ならではの学びについて、浦井准教授は「基礎化学や有機化学系科目は他大学の理・工学部化学科とほぼ同等の教育内容だと思います。東京農業大学の特徴が強く表れるのは、より生物学に近い分野の化学系科目まで学べることです。生物への展開が可能な天然物化学や、微生物を利用した高分子化学系科目なども取り揃えていることが他大学に類を見ない、当学科の大きな特徴です」と話す。

この他、特色ある科目としては、神奈川県伊勢原市の農場を活用した農場実習や、甲種危険物取扱者の資格取得を目指した危険物取扱法などがある。

社会からの需要が高い化学を身につけた人材に

2017年度に開設した分子生命化学科は、20年度に完成年度を迎える。学科設置時に「化学を愛する君たちへ」というキャッチコピーがついたことからも分かる通り、化学の科目数が非常に多い。ここまでにみてきた教育・研究内容を踏まえても、化学が好きな受験生や、生物が好きで、「生物をさらに深く知るために化学を学びたい」というような受験生に向いた学科といえるだろう。

初めての卒業生が出るのは21年春だが、進路としては製薬、農薬、化成品、化粧品、香料、材料、環境などの化学に関連する幅広い業界が想定される。近年、研究職・開発職を希望する場合は大学院への進学がほぼ必須となっているが、東京農業大学内で大学院に進学する場合は学費の優遇措置があるなどサポート体制も整っている。学部で化学をしっかりと身につけた上で、大学院でさらに専門性を高めた優れた研究者を輩出したいという大学の思いの表れだろう。

最後に、浦井准教授に高等学校の進路指導教諭へのメッセージを頂いた。

「経済産業省の調査によって、企業は化学を修めた人材を欲していることが明らかになっています。化学は理系学問の基礎となる重要な学問ですし、モノづくりの中心でもありますから、社会の需要が高いのは当然かもしれませんね。このような化学の魅力と強みが受験生に伝われば幸いです」

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