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社会が大きく変わる中、イノベーションを起こせる人材が求められている。大学においても専門領域を極めるだけでなく、さまざまな知見を組み合わせて新しいものを生み出すことが重要になった。こうした時代の変化にあわせ、学部・学科の再編を進める東京理科大学の岡村総一郎副学長に、その狙いを聞いた。
大規模再編を進める東京理科大学の狙いとは?
東京理科大学は2025年にかけて段階的に、大規模な学部・学科の再編やキャンパス再配置を進めていく。岡村総一郎副学長はその背景を次のように説明する。
「再編の目的は『次世代をつくる人材』を育てることにあります。人口減少が進むなど社会情勢は大きく変わっています。企業の時価総額ランキングを見ても、30年前には世界トップ50に32社の日本企業が入っていたのが、昨年はわずかに1社のみ。高度成長を支えてきた“日本型企業”に限界が見えてきています。大学も高度成長期の発展モデルである学問体系ごとの縦割り教育だけでなく、分野横断型の教育を取り入れることで、幅広い視野を持ち、イノベーションを支えられる人材を育てる必要があるのです」
東京理科大学は長期ビジョン「TUS VISION 150」で、建学150周年を迎える2031年にあるべき姿を公表している。今回の再編はその一環であり、建学の精神を踏まえた上で特色を打ち出していきたいと岡村副学長は話す。
「本学は『理学の普及を以て国運発展の基礎とする』という建学の精神のもと、中高の教員や成長期のハイテク産業を支える技術者を多数輩出し、理学の普及に努めてきました。この建学の精神は、より時代に合わせた形で『Building a better future with Science』とも表現できます。理科大は『科学技術でよりよい未来を作っていきたい』という志を持つ人が集まって勉強し、その成果を社会に発信していく大学でありたいと考えています」
研究へのデータの活用や分野横断型の研究を加速
具体的な再編の中身を見てみよう。まずは2021年に、経営学部で国際デザイン経営学科が新設される。基礎工学部では、同年に先進工学部への名称変更が行われ同時に各学科も名称を変更、さらに23年に物理工学科と機能デザイン工学科が新設される。23年には理工学部で、創域理工学部への名称変更も行われる。
こうした動きについて岡村副学長は、「今までの枠組みでも次世代を育てる教育は可能だが、それを見える化し、メッセージとして伝えていくことが重要」だと説明する。実際、再編に先行する形で取り組みが進む分野横断型研究の事例は数多くある。たとえば幅広い分野の10学科を有する理工学部では、その特長を生かし、異なる学科の学生が混じり合うプロジェクト研究がすでに行われている。この環境を活用して横断型のコースを設けるなど新しい学問領域を作り出し、社会のニーズに沿った動きが加速している。
岡村副学長は再編のキーワードに「データサイエンス」を挙げる。日本ではデータを専門的に取り扱えるデータサイエンティストの数が足りておらず、企業からのニーズが高い。研究の分野においてもデータを扱う技術の重要性は増している。
「データサイエンスは特定の学科だけに適用できるものではなく、材料、薬学、生物学など、どの分野でも必要になっています。本学は全学的な取り組みとして、理科大を出れば一通りデータを取り扱えるような教育をしていきたい。そのために、『データサイエンスサーティフィケイト』という学内証明書を発行する仕組みがあります。指定科目の単位を取得することで、データサイエンスのベーシックな部分を認証します。もちろんこれらの科目は、どの学部・学科でも履修可能です。次のステップとしてアドバンストなコースを作ることも検討中です」
データサイエンスを重視する東京理科大学の姿勢は、経営学部の特徴的な教育内容にも見て取れる。経営学は文系と見られがちだが、近年はデータに基づいた経営が重要になっている。東京理科大学には「データを駆使した経営」を学ぶカリキュラムが充実しており、数学についても「理科大基準」の高いレベルで学んでいく。
さらに新設の国際デザイン経営学科では英語力も重視。この学科のみ1年次を長万部キャンパスにおける全寮制の環境で学び、しっかりとした英語力を1年かけて養成する。
キャンパスの位置付けを立地や規模に応じ明確化
キャンパスの再編も同時に進む。25年には薬学部が野田キャンパスから葛飾キャンパスへ移転し、学部・学科の再編に合わせて各キャンパスへ明確な位置付けが行われる。岡村副学長が説明する。
「理学部(第一部・第二部)、経営学部が学ぶ神楽坂キャンパスは『サイエンスキャンパス』として、科学に根ざした教育研究を行っていきます。工学部、先進工学部、薬学部が学ぶことになる葛飾キャンパスは『イノベーションキャンパス』と位置付け、新しいものがそこから生まれてくるキャンパスに。創域理工学部が学ぶ野田キャンパスは『リサーチキャンパス』として、高精度・大型の設備を使用した研究の拠点としていきます」
都心に位置する神楽坂キャンパスは高い利便性が魅力だが、都会にあるがゆえ「電車による振動や磁場の揺れなどがあって、高い精度が求められる電子顕微鏡を使うような実験には厳しい条件」だと岡村副学長は言う。対して野田キャンパスは、面積が広く、外部からの影響が少ない。大型の設備を使用するような研究に最も適した環境なのだ。
「野田キャンパスは『横断』『融合』を前面に出して活動しています。現場では『共響(きょうめい)』と呼んでいて、さまざまな専門の人が交わりながら一つの課題を解決するキャンパス作りをしています」(岡村副学長)
全寮制の北海道・長万部キャンパスは「国際教育キャンパス」として、初年次教育のモデルケースとなることを目指す。創域理工学部に新たに設置される留学生対象の「国際コース」では、1年次に長万部キャンパスで基礎を徹底的に学ぶ。2年次には野田キャンパスで日本の学生と同じ講義が受けられるまでに育てあげる計画だ。留学生と交わる機会が増えることで、日本の学生にも良い影響が表れることを期待しているという。
社会から高い評価を得る「実力主義」の教育研究
高校教員から、教育力が高い大学(理工系大学で第1位)、研究力が高い大学(私立大で第1位)と評価される東京理科大学。こうした特色を生かした「国際化」の取り組みとして、大学院生が1年間に海外で研究発表を行う機会を、現在の約500件から1500件まで引き上げることを目指している。大学院生は3000人ほどなので、2年間の在学期間中に1度は国際会議での発表を行うことになる計算だ。
「伝統的に『実力主義』を掲げており、学生も教員も真面目に研究に取り組んでいます。『研究してなんぼ』という雰囲気がありますね。また、ほとんどの学科に進級時の関門科目があるため、留年する学生もいます。勉強しないと進級できない厳しさがありますが、それが本学の特色であり、社会からの評価にもつながっていると感じます」(岡村副学長)
こうした評価は就職の数字にも表れている。19年の実就職率(※)は94・5%と非常に高い。しかも単に就職するだけでなく、多くの学生が希望の企業に就職できている。
企業から「理科大の学生であれば間違いない」と高く評価されるのは、卒業生が就職先で活躍している証拠。教員として働く卒業生の姿を見て東京理科大学を目指す受験生が多いことを含め、教育力の高さの表れだと言える。
それでは、大学入学前の高校生にはどんな学びが求められるのか。岡村副学長に聞いてみた。
「理科大はサイエンスやテクノロジーで社会をより良くしたい人が集まって、みんなでワクワクしながら、楽しみながら学べる大学でありたいと考えています。今は大学入学がゴールになっている人が多いですが、その先の夢があれば、もっとやる気になるものです。ただ、夢を持つことはもちろん大切ですが、その夢にこだわりすぎるのではなく、柔軟に物事を吸収する姿勢を持っていたほうが大学に入ってから成長します。そのため、高校時代は基礎学力を身につけた上で、身の回りにある社会課題に幅広く興味を持つことが大切です。実現したいことを見つけ、チャレンジする気概を持って入学してほしいですね」
夢があれば必要な勉強が明確になり、学習のモチベーションにもつながっていく。東京理科大学には、特任副学長の向井千秋氏を中心に宇宙滞在技術に関する研究を実施するプロジェクトや、MIT(マサチューセッツ工科大)地域起業家創生加速プログラムの活動から設立された東京起業推進センターによる起業家支援、世界中の学生が100万ドルの起業資金をかけて競い合うビジネスプラン発表会「Hult Prize」など、新しいことに挑戦する「アントレプレナーシップ(起業家精神)」を伸ばすための仕組みや、魅力的な研究を行う研究室も数多く用意されている。やる気のある学生の力を伸ばして次世代社会を支えていくために、東京理科大学は時代に合わせた積極的な変革を進めている。
※実就職率=就職者数÷(卒業者数−大学院進学者数)×100