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流通科学大学発 社会共創プログラムとは?
キャンパスを飛び出し、地域や企業と連携して課題解決に挑む学びが話題を集めている。「アクティブラーニング」や「PBL(問題発見・課題解決型学習)」とも呼ばれるこの学びにおいて、ユニークな取り組みを進めているのが流通科学大学だ。同大学の「社会共創プログラム」を牽引する清水信年教授に話を伺った。
学内の誰もが参加できるプログラム
―流通科学大学の「社会共創プログラム」とは?
企業や地域、自治体が抱える課題やニーズに対して学生が調査・企画・提案を行い、商品化や実用化を行うプログラムです。3つの柱から成り立っており、1つ目は大学自身が主催するプログラム(※1)、2つ目は学外の組織が主催するコンテストをはじめとしたプログラムへの参加(※2)、3つ目は地域の高校との連携です。いずれの取り組みも、教員の個人的なつながりや特定のゼミだけでの取り組みではなく、全学的に誰もが参加できるプログラムになっていることが特徴です。
―プログラムの中から実際の商品も生まれたと聞いています。
はい。地域の農産物を使った「発掘チップス」というスナック菓子が商品化されました。
協力してくださる企業や自治体からは、自分たちの「リアルな課題」が提示されます。これに対して、学生が本気で向き合い、検討に値する質の高い提案を目指していることが本学のプログラムの特徴でもあります。企業側も社会貢献活動として参加するのではなく、本気のビジネスとして参加してくれています。真剣勝負の中で提案が磨かれているからこそ、商品化・実用化という形あるゴールにたどり着けているように思います。また、提案の質が高いからこそ、企業も継続的に参加してくれ、プログラムの充実につながっているように思います。
―高校との連携とは、どのような活動でしょうか。
地域の活性化や商品開発に取り組んでいる高校があります。そういった学校へ私たち教員が出向き、マーケティングなどの専門的な見地からアドバイスを行っています。本学の学生も一緒に高校を訪れ、高校生にとっての「コーチ」や「メンター」として活動しています。
社会人としての基礎を築くことができる
―プログラムを通して、学生にはどのような変化がありますか?
「問題を発見する力」「自分の考えを伝える力」「チームで協働する力」が養われています。プログラムでは、企業が自社の状況や課題、将来の目標などを語ってくれます。そこから学生が各種の調査を行い、「解決すべきポイントはここだ」という課題を見つけ出したり、「これは他人事ではない。なんとかしなければ」という当事者意識を持ったりします。そこから解決策を考えていくのですが、その途中では当然、チームワークが必要ですし、ディスカッションやプレゼンテーションも必要になる。これらの経験はすべて、企業人として、ひいては人間として非常に大切な力の土台となります。大学生活を経て社会へ巣立っていくためのプロセスとして、とても有効な時間を過ごしてくれているように思います。社会共創プログラムでの経験は就職活動でも大きなPR材料になりますし、学生からは、企業からの評価も高かったと聞いています。
もう1つの大きな変化は、学内での授業への意識です。プログラムに参加する過程で、「これって、この前の授業で先生が話していたことだ」という気づきに出合うことがあります。あるいは、学生が困っているときに、「その内容は、この授業で扱っているよ」と教員が科目の紹介をしてあげることもあります。教室での学びと学外での実体験が結びつくことで、これまでとは違った高い意識で授業に取り組めるようになりました。
いかにして当事者意識を育むかがポイント
―プログラムを有意義なものにするコツは?
私たち教員の我慢です。これに尽きます。この種のプログラムにおいて一番大切なことは、学生に興味や関心を持ってもらうことです。そして、「自分たちに関わりのあることだ」という当事者意識を持ってもらうことです。これは、教員が「こうしなさい、ああすればいいよ」と指示したり、答えを提示したところで無理なものです。でも、どうしても私たち教員は答えを教えたがってしまう。だから我慢が大切なのです。私たちの仕事は「教える」ことではなく「導く」ことだと言い聞かせています。
このための方策として力を入れているのが、企業の方に学生と実際に顔を合わせてもらうことです。直接会って話をしてもらう機会を、できるだけ多く設けるのです。企業からの課題やテーマは一覧表になっていることが多いのですが、それを見ただけでは、学生は当事者意識を持ちにくいです。ところが実際に顔を合わせて話を聞かせてもらうと、学生はぐんぐん引き込まれていき、やる気を見せていく。これは一種の実体験を通じた〝気づき〞なのですが、気づきが生まれた瞬間、学生は加速度的に成長していくと感じています。高校でもPBLに取り組んでいる先生方は多いと思うのですが、ぜひ、我慢と気づきの提供は意識してもらえたらと思います。
―今後の目標は?
流通科学大学はマーケティングや流通を専門とする教員が数多く在籍しており、実践的なPBL を行うには非常に適した環境です。この環境をさらに充実させることが目標です。従来は主に2年生以降がプログラムの対象だったのですが、1年生から参加できるプログラムも拡充しているところです。近年では、「社会共創プログラムに参加したくて入学した」という学生も増えてきました。この期待にしっかりと応えられるよう、プログラムに磨きをかけていきたいと思います。
※1「神戸学生イノベーターズグランプリ(I‐1グランプリ)」が代表例。2017年度は株式会社伍魚福の協力を得て、「食品分野における『新市場創造型商品』を考えよう!」をメインテーマにして開催。流通科学大学をはじめとした3大学1高校から22チーム、95人が参加した。
※2代表例はSカレ委員会が主催する「Sカレ(StudentInnovationCollege)」。2017年度は全国の22大学26ゼミ、約300人のマーケティングを学ぶ学生が参加した。流通科学大学は、2015年度の大会において「内定を勝ち取るための就活ノート」テーマ部門でプラン1位を獲得。提案したノートがノベルティグッズとして実用化された実績を持つ。
興味が次々にわいてくる!
やりたいことが全部できる場所
RITとは、社会共創をテーマにして活動する学内のサークル。企業や自治体と協力して課題解決に取り組んでいます。
この活動の中から生まれたのが「発掘チップス」です。地元・神戸市西区の企業の技術を用い、材料となる野菜も同じく神戸市西区の有機(オーガニック)野菜を使いました。
開発にあたっては、企業を訪問して強みや課題を聞かせてもらいました。真空フライ製法という特色ある技術を実際に見せてもらったことも、「この技術を使って商品化を!」という思いにつながりました。また、神戸市西区は農産物が豊富なのに十分に認知されていないという課題に気がついたことも、野菜を使ったフライドチップスという商品のアイデアになりました。一番苦労したのはネーミングです。商品の名前とは、商品のコンセプトそのもの。何度もアイデアを出し、先生方にもアドバイスをもらいながら現在の商品名を決めることができました。RITの活動は大学の「夢の種プロジェクト※」の一環であることや、商品が神戸の大地から生まれて来ていることをカギにして、優れたものを掘り起こして花を咲かせるという思いを込めて「発掘」という名前を付けました。
もともと商品開発やマーケティングに興味があり、入学後も関連する授業を受けたりしていました。その思いがさらに膨らみ、「商品開発のすべての過程を体験したい」と思うように。そこで出合ったのがRITです。活動の過程では企業の方と話す機会もたくさんあります。最近では、年の離れた社会人と話すときも物怖じしなくなってきました。在学中から素晴らしい体験をさせてもらっていると、感謝しています。今後の目標は、プロジェクトやチームのマネジメントにチャレンジすることです。RITという場所を使って、大学生のうちに「やりたいことは全部やる!」という気持ちで過ごしたいです。
※夢の種プロジェクト
大学の4年間を「なりたい自分を実現するための4年間」と位置づけ、将来の夢を「探して、育てて、咲かせる」ことを目的とした取り組み。「探す」フェーズの1年次前期には、多様な体験を通して自身の興味・関心や得意なことを見つける「気づきの教育プログラム」を配置。1年次後期以降の「育てる」フェーズでは、学部での学びや社会共創プログラム、クラブ活動など、学内外のさまざまな経験を通して将来を考える機会が設けられている。そのうえで、「咲かせる」のフェーズである就職に向けては、キャリアアップや夢の実現に向けてきめ細かな支援を行っている。