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一般的に留学は、言語習得や文化交流を目的とするものが多くを占めます。金沢工業大学が行うラーニングエクスプレスは、海外の学生と現地の課題解決を行う特徴的な短期留学プログラムとして注目されています。昨年9月にはインドネシアのジョグジャカルタ市で2週間のプログラムが行われました。日本からの学生は、インドネシアやシンガポールの学生と、どのように協働したのでしょうか。金沢工業大学大学院工学研究科バイオ・化学専攻1年の東城暁香さんに体験談を聞きました。
―なぜプログラムに参加しようと思ったのですか
東城 もともと国際交流に興味があり、大学1年の時に学外のプログラムに参加しています。ホームステイ先で優しく受け入れてもらったことで海外への気持ちがより強くなり、こうしたプログラムには積極的に参加したいと思っていました。英語は苦手なのですが、逆にどれだけ通用するかチャレンジしてみたかったのも、参加を決めた理由の一つです。
―今回、インドネシアではどんな課題に取り組みましたか
東城 私達が行った村の特産品で、サラックという木の実からできるキャンディがあります。キャンディの製造は全て人力で行われています。材料をかき混ぜる作業は長時間の立ち仕事で、体力的につらく、時間的な拘束も大きいので、人が作業に関わる時間を短くする方法を考えました。また、商品の知名度を上げる方法も検討しました。
―難しい課題かと思いますが、どのように解決したのですか
東城 最初の約一週間は村に滞在し、問題点について話し合いを行いました。現地の大学に戻ってからは、課題解決のためのアイデア出しや、プロトタイプの製作が始まります。
かき混ぜる問題に対しては、村に水が豊富にあることから着想を得て、水力でドラム缶を回して材料をかき混ぜることができる機械を作りました。村の人が再現できるように、材料は現地で入手できるものだけを使います。工学系の学生の指導のもと全員で作業に当たり、短期間で形にすることができました。
知名度の問題では、パンフレットやポスターを、現地語だけでなく公用語のインドネシア語や英語でも作成しました。また、商品や村をアピールするために、中身を見えるようにしたり、サラックの皮を使ったりするなどパッケージを改良しました。
―現地の人々の反応はどうでしたか
東城 完成させた試作品を持って再び村を訪れ、村の人々に説明と実践を行いました。かき混ぜる機械への好意的な反応が特に多かったです。ポスターやパンフレットにはいくつか改善点が寄せられたので、すぐに修正を行いました。活動の成果は、現地の大学の学生にも発表しています。
―海外の学生と一つのプロジェクトを行う貴重な経験をして、何を感じましたか
東城 意見やアイデアを出し合うことは大学でも行いますが、日本人同士だと遠慮がちになることがあります。海外の学生は「こんなもの使えない」と自分で決めつけずに、思ったことは気軽に発言していて、積極的に発信することの大切さを感じました。
アイデア出しでは、付箋を使って意見をまとめる場面が多かったです。大学の授業で慣れ親しんだ方法ですし英語で発言することに比べて、意見を伝えやすかったと感じています。
ただ、全てのやりとりが英語なのに加え、会話のスピードが早いので、発言のタイミングを見極めるのは難しかったです。対等に話し合うためには、英語力を高めていく必要があると感じました。一方で、相手に積極的に接することで、身振り手振りを用いて現地の人々と仲良くなることができました。言葉以外の方法を覚えることができたのは収穫でした。
―最後に、ラーニングエクスプレスでの経験をどう活かしていきたいか、教えてください
東城 ラーニングエクスプレスでは、対話の中で考える力が身についたと思います。相手の話を聞いて異なる意見を受け入れた上で、話し合いを通して考えることが大切だという意識を強くしました。異文化を持つ人とのやりとりでは、日本と違う部分が多く出てきます。学生時代にそうした体験をするのは大切だと思います。社会に出たら、自分の意見をはっきり伝えなければいけないことが増えると思うので、今回の経験をそうした場面で活かしていきたいです。
海外留学で問題解決の手法を実践(金沢工業大学)
金沢工業大学が行う国際的ソーシャルイノベーションプロジェクトであるラーニングエクスプレス。学生が新興国の地域コミュニティを訪れ、各地域の抱える問題への解決策を提案、実施する短期留学プログラムだ。同大が力を入れるプロジェクトデザイン教育(*1)で学ぶ、デザイン思考(*2)という問題解決の手法を、多文化の環境で実践的に学ぶことが目的だ。
学生は事前学習として、デザイン思考のトレーニングや現地文化などの予備調査に取り組んだ後、2週間の現地活動に望む。シンガポール理工学院など海外の学生との多国籍チームで地域コミュニティに入り込み、現地の人々と同じ体験をすることで、問題への気づきや原因の分析につなげていく。問題を持ち帰ったチームは、それぞれの持つ専門知識や技術を活かしてアイデアを出し合い、革新的な解決策を生み出すことを目指す。アイデアはプロトタイプとして具現化され、活動の結果は地域の人々の前でプレゼンされる。アイデアへの評価に加え、改善のためのフィードバックを得ることも多い。
プログラムを通して学生はどのように成長するのか。企画部広報課長の志鷹英男さんが言う。
「異文化や地域コミュニティと深く関わることで、学生のチャレンジ精神や社会貢献の精神が強くなります。普段とは違う環境で新たな友情が育まれますし、自分自身を見つめなおすきっかけにもなるようです」
学生時代に言葉や文化が異なる人々と一緒に何かを成し遂げた体験は、貴重な財産となるだろう。世界で活躍できる人材を育てることに、金沢工業大学が本気で取り組んでいることをうかがい知れるプログラムだ。
*1 問題発見から課題解決まで、チームでどう取り組めばいいかを実践的に身に付ける教育。日本型ものづくり教育として海外でも評価され、カリキュラムの海外輸出も行われる。
*2 解決すべき問題を見極め、できるだけ多くのアイデアを考慮した上で、革新的な解決策を探る問題解決の手法。
【お問い合わせ先】
金沢工業大学
入試センター
TEL:076-248-0365
FAX:076-294-1327
メール:nyusi@kanazawa-it.ac.jp