【立命館アジア太平洋大学】異文化との衝突が作る新しいリーダー像

【立命館アジア太平洋大学】異文化との衝突が作る新しいリーダー像

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boushi日本有数のグローバル大学として知られる立命館アジア太平洋大学。
海外で即戦力となる人材を育てることで、企業から高い評価を受けている。
その背景には、多文化多言語環境の中で苦しみながら成長していく学生たちの姿があった。


別府湾を見下ろす高台に位置する立命館アジア太平洋大学(略称APU)は、大学施設とAPハウス(国際教育寮)が併設され、外国のような開放的な雰囲気を持つ。在学生の約50%が、80ヵ国・地域を超える海外からの学生で占められるのに加え、教員の約50%が外国人、さらに全講義の約9割が日英2言語で開講されるなど、日本のグローバル教育の最先端を行く大学だ。大学の国際化を牽引するSGU(スーパーグローバル大学)にも選ばれている。

APUは企業からどのように見られているのだろうか。日本経済新聞社と日経HRが、今年の2〜3月に上場企業の人事担当者を対象に行った、大学と学生のイメージ調査の結果(左図)を見てほしい。名立たる有名大学に混ざり、APUは「グローバル化に熱心な大学」という項目では、全大学の中で1位、全体では19位に位置している。私立大学に限れば、早稲田大学、慶應義塾大学に続く3位だった。

グローバルなイメージだけに留まらず総合的に高い評価を得ているのはなぜなのか。アドミッションズ・オフィス課長の中村展洋さんは言う。「グローバルというと仲良く国際交流をしているだけと思われがちですが、APUは違います。学生は在学中、多文化多言語の環境で数多くのグループワークを行う中で、価値観の違う人と協力して何かを達成する方法を、苦しみながら体得します。その結果、企業の社内教育では育成が難しいような能力を備えた学生を輩出できていることが、高い評価につながっています」

【多様な意見をまとめ上げチームを導くリーダーに】

APUの入学者のうち、帰国子女など英語が堪能なのは5%程度。残りは小学校から高校まで日本で過ごした学生で、英語の能力が飛び抜けて高いわけではない。普通の学生を、英語を使って世界と渡り合える人材にまで成長させる教育力を有するのがAPUの特徴だ。どのような教育を行っているのか。入学部長の近藤祐一教授(アジア太平洋学部)が説明する。

「初年次教育では、生活と学習の両方の場面で、失敗から学ぶことを重視しています。APハウスや授業で国際生と付き合う中では、小さな摩擦や衝突に頻繁に直面します。国内生がグループで集中的に異文化体験をする韓国での研修プログラムや、協働学習をするワークショップという必修科目があります。上級生のTA(ティーチングアシスタント)がサポートはしますが、基本的には全て学生だけで取り組みます。言語や文化の違いから、スムーズに進むことはほとんどなく、挫折を経験する学生も多いです。こうした体験を通じて、困難な状況を乗り切る力や独自のコミュニケーション能力が身につきます。
APUの学生が世界と対等に渡り合えるのは、単に多文化の環境にいたからではありません。多くの挫折や失敗を乗り越えて、多文化の中で成果を出す方法を身につけているからなのです」

違いをまとめ、個人の能力を引き出せる人が、APUでは理想のリーダーとされる。多様な考えがあり、常識と言えるものが存在しない環境だからこそ、普通とは異なるリーダー像が求められるのだ。今後の多様性ある社会では、ファシリテーションスキルを備え、人々を後ろから支えられるような人材が必要となるのは間違いない。だからこそ、APUの学生に企業からの注目が集まっている。

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年間約350社が説明会のために足を運ぶなど、海外に展開する企業からの期待は大きく、上場企業に就職する学生が多い。

一方で、個性が強い学生も多いAPUの就職を、一言で語ることはできない。「社会に対して自分は何ができるのか」「最大限に学びがあるのはどこか」という視点で会社を選ぶ学生が多く、規模や知名度にとらわれずに就職先を決める傾向が強いためだ。社会的企業への就職や、起業家として事業を立ち上げるケースも増えている。

APUでは学生同士が助け合うピア・ラーニングが盛んに行われていて、教職員の支援を受けつつ、学生が自主的に企画運営をしている。就職活動の場面でも、内定を得た先輩が、体験談を後輩に伝える企画を行っており、後輩にとっては、思いがけない仕事を知り、視野を広げるきっかけとなる。東京から遠く、情報が限られるからこそ、学生同士の情報共有が大切にされているのだ。

【教学内容のシステム化で学生の能力を確実に育成】

2017年からは新カリキュラムを導入する。具体的に何が変わるのか。国際経営学部副学部長の大塚宏蔵教授は言う。

「4年次の必修科目としてキャップストーン科目を導入します。国内生と国際生が共同で、実際のビジネスケースに取り組みます。大学で学んできた知識を統合し、実社会でどう活用できるかを学ぶと同時に、1年次から培ってきた多文化的な視点を統合することも目指します。 必修科目も拡大します。各分野を系統立てて学ぶことで、大学が求める能力が卒業時には確実に身につくようになります。学びの質を高めることは全学的な取り組みです。その一つの成果として、今年度中にAASCBというビジネススクールの国際認証を取得する見込みです」

授業では教授法の改革が進む。教えたいことを一方的に伝える授業ではなく、双方向型の授業が求められているからだ。アメリカの大学のノウハウを活かした授業は、内容がしっかり身についたと学生からの評価も高い。

今年の秋からはオナーズプログラムが開始される。選抜された学生はAPハウスの特別フロアに入居し、勉強や対話を通して、24時間、お互いに切磋琢磨していく。一種のエリートプログラムだが、知識をつけるだけでなく、他の学生の目標となるような人材を育てるのを目的とする。リーダーシップやコミュニケーションの能力が高く、プログラムで得たものを他の学生に還元できる、APUらしい学生を4年間かけて育てる計画だ。

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多くの大学がグローバル化への対応に追われているが、APUは教育内容の充実に力を入れるなど、一歩先を進んでいる。多文化の環境でしっかり学び、将来は国際的な舞台で活躍したいと考える生徒の選択肢として勧めたい大学だ。

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