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改革の旗印を鮮明にして、一躍人気私学に躍進した東洋大学。改革の推進役の一人である同大理事で入試部長の加藤建二氏に、今後の入学試験の展望や傾向と対策をうかがった。
―15年度、16年度と、2年連続で志願者が8万人を突破し、過去最高の数字を更新しています。大学通信の調査では、全国の私立大学のなかで、15年度、16年度ともに志願者数で第7位の座を占めました。来年4月には3つの新学部の設置構想を計画されるなど改革が続きますね。
加藤 社会変化に機敏にアジャストしていく。そういった姿勢が支持を集めた結果だと受け止めています。かつての本学を知る人には、別の大学に生まれ変わったといわれますね。
―情報発信にも積極的で、従来、大学が公開してこなかった情報も出されています。たとえば繰り上げ合格に関すること。ウェブでの体験授業の発信も活発です。こうした旺盛な情報発信力も高評価を得ています。
【入試のキーワードはアドミッションポリシー】
―2020年からセンター試験が記述式を含む新テストに移行します。この改革について、どう見ておられますか。
加藤 改革は高校、大学の教育全般を見直す動きであり、そのなかで入学試験を変えていこうということです。
学生募集においては、どんな学生を、どういったカリキュラムで育て、最終的にこんな人材をつくるという、ディプロマ、カリキュラム、アドミッションのつのポリシーを明確に打ち出すことが求められています。
つまり、アドミッションポリシーに即した入試を実施するというのが趣旨で、多面的評価とベースになる知識に対する比重の置き方は、各大学で考えて判定してくださいという話です。
入試改革は、文部科学省からいわれたからやるというものではなく、私学は自分たちで考え、多面的な評価を下せる方式を研究しないとなりません。
―具体的には、どう変えていくおつもりですか。
加藤 抜本的なことはまだ先ですが、今年は外部の英語試験を利用した入試を一般入試にも拡大し全学2700名超の募集規模で導入します。
また、一部の新設予定の学部において、他大学にさきがけて約120講座に上るウェブでの体験授業を利用した推薦入試を計画しています。
とはいえ、一気に入学試験を変えるつもりはありません。受験生や高校現場の声を聞きながら、徐々に進めていくことになるでしょう。
【曖昧になっていく一般入試と推薦の境界】
―新テストは段階評価。1点刻みの公平性は崩れ、従来の偏差値も通用しない。合否判定に不透明感が漂っています。
加藤 公平の考え方が変わらざるを得ない。結局、アドミッションポリシーに合っているかどうかで、合否が分かれます。
それに対し必ず不満が出てきますが、アドミッションポリシーに即した指標で成績を測り、この結果が出たと、きちんと説明しなくてはなりません。
―従来の試験とは大きく性格を変えるということですね。
加藤 当然ながら受かる、受からないは気になるでしょうから、ある程度の指標が求められます。
今の推薦入試が比較的近いかと思います。本学では面接や書類選考、小論文のほか、採点の割合を公表していますが、他大学でも出すことになるでしょう。
将来的に、一般入試と推薦入試の括りはなくなっていくと思いますが、その点は大学側もまだわかっていません。入試の変更により、様々なことが変革されていくことは間違いないでしょう。
【従来の序列さえ変える高校と大学の大改革】
―大学入試は複雑化する一方です。受験回数が増えて、受け方も多様になりました。
加藤 情報発信の工夫が足りないなど、複雑化は大学にも責任がありますが、高校の先生が入試全体を把握するのは、かなり困難な状況になってきました。
しかし生徒が大学や学部・学科を選ぶ段階で、どこの大学で、どんな勉強をするかについての先生のアドバイスは不可欠です。その意味で大学、学部・学科に関する最新情報の収集は絶対に必要となり、一人ひとりに合った指導をする、コンシェルジュ的な役割が増しました。
各大学が出しているビジョンや、どんな人材を育てようとしているかを知っていただいて、生徒にきめの細かい対応をお願いしたいと思います。
―有名大学に入れることが、ゴールではなくなりました。
加藤 もはや大学名で就職が決まる時代ではありません。その生徒が激動の時代を乗り越えていくために、どんな大学で学べばいいか。そんなアドバイスが急務となっています。
高大接続改革により、大学も高校も大変動を迎えます。取り組み方いかんでは、大学や高校の序列も様変わりする。そんな厳しい時代に生きていることを、最後に確認したいと思います。