前回の記事では人気の医療職の中から、理学療法士をピックアップ。豊橋創造大学保健医療学部助教の野嶋治先生に、理学療法士の仕事について教えていただきました。(参照:専門家に聞いた!理学療法士ってどんな仕事?)
理学療法士の仕事についてもっと詳しくなるために、今回は実際に医療の現場で理学療法士として働く鈴木啓佑先生にお話を伺ってきました。
取材・文:雫 純平
高校時代の怪我がきっかけで理学療法士の仕事に出会う

鈴木先生は豊橋創造大学リハビリテーション学部(現:保健医療学部)理学療法学科の第1期生で、現在は愛知県西尾市の神谷内科整形外科で理学療法士として働きながら、プロ野球や社会人野球の選手を数多く輩出している愛知大学硬式野球部でスポーツトレーナーも務めています。
―― まず、鈴木先生が理学療法士をめざしたきっかけを教えてください。
鈴木 私は子どもの頃からスポーツが大好きで、小中高と野球を続けていました。将来はスポーツに関わる仕事をしたいと考えていて、理学療法士の仕事に出会ったのは高校2年生の秋です。野球で肩と肘を故障してしまったのですが、治療とリハビリテーションで理学療法士の先生にとても良くしていただいたのです。その時の先生に憧れ、自分も同じようにスポーツでの怪我に悩んでいる子どもたちの助けになりたいと思い、理学療法士になることを決意しました。
―― 理学療法士との出会いが高校2年生の秋となると、大学選びもすぐでしたね。
鈴木 私が高校を卒業する年がちょうど地元の豊橋創造大学に新しく理学療法学科ができるタイミングでしたので、志望校はすぐに決まりました。第1期生ということで先生も親身になってくれましたし、機材や設備も充実していてとても学び甲斐がありました。
大学ではグループワークの時間が多かったのが印象的です。先生はすぐに答えを教えてくれないので、そこで考える習慣や調べる習慣などが身についたと思います。当時は「早く答えを教えてくれればいいのに」などと思っていましたが(笑)。大学時代に身についた良い習慣は今の仕事でも役立っています。
考えてみれば、怪我をしなければ理学療法士の仕事には出会わなかったはずですし、良いタイミングで地元の大学に希望の学科ができたわけですから。進路を決める高校2~3年生の時期に良縁に恵まれたといえるかもしれないですね。
地域を守る仕事のやりがいとは
―― 普段はどのようなお仕事をしていますか?
鈴木 私が勤めている神谷内科整形外科は地域に密着した医院で、午前中の患者は地域の高齢者の方がほとんどです。農業や漁業などの産業が盛んな地域ですので、仕事で腰や膝を痛めてしまった方のリハビリテーションのお手伝いをすることが多いです。午後になると地域の学校の部活動などで怪我をしてしまった児童・生徒の患者も増えてきます。
―― 仕事のやりがいはどんなときに感じますか?
鈴木 毎日患者さんと関わる仕事ですので、直接言葉を頂くことが多くあります。「ありがとう」「痛みが良くなったよ」「大会で良い成績がとれたよ」などと言ってもらえた時は本当に嬉しいですね。
もう1つ、地域を守る仕事というやりがいもあります。日本は既に超高齢社会に突入しており、4人に1人が65歳以上という状況ですよね。私の勤める西尾市、幡豆郡(はずぐん)ももちろん例外ではありません。高齢者の患者の場合、今は車で医院に通えても、数年後には通うことが難しくなっている可能性があります。その少しでもリスクを減らすため、リハビリテーションでは運動を多く取り入れ、筋力低下を予防してなるべく長く自力で通院ができるようになってもらうことが大きな方針です。通常の治療やリハビリテーションの業務を越えて、体操教室や体力テストなども実施しています。当医院を発信地として、地域に介護予防の意識づけをしたいという思いがあります。

自分から行動すれば夢を叶えられる
―― 医院でそこまでやっているんですね。「地域を守っていきたい」という思いが強く表れているように感じます。元々は「スポーツに関わる仕事をしたい」という思いで理学療法士をめざしたとのことですが、理学療法士とスポーツにはどのような関わりがありますか?
鈴木 一般的に理学療法士は病院での勤務になるので、通常の勤務中でのスポーツとの関わりといえば、部活動で怪我をした子のリハビリテーションなどでしょうか。それ以外では、地域の小学校より依頼を受けて、臨時講師として体力向上のための講演会をすることがあります。また、理学療法士の仕事とは直接関係ありませんが、私は自分の子どもの少年野球チームのコーチも務めています。理学療法士は身体の使い方の知識がありますし、コミュニケーションも得意分野ですので、スポーツとの関わり方は色々あると思います。
私自身はそれよりもさらに深くスポーツと関わりたいという思いがあり、今は神谷内科整形外科の理学療法士としての仕事の他に、愛知大学硬式野球部のトレーナーとしての仕事も持っています。
――プロ野球選手も輩出する強豪チームのトレーナーになるのは、とても大変なことのように思えます。
鈴木 確かにチームのトレーナーは狭き門です。理学療法士になればすぐになれるというものでは決してありません。
私はスポーツと関わることを強く希望していましたので、平日は病院で働きながら、休日を利用してスポーツトレーナーのセミナーなどに積極的に参加していきました。大阪のアスリートケアという、スポーツ障害の治療と予防の研究や、高校野球のサポートなどをしている理学療法士団体に所属し、愛知から何度も通いました。幸いなことに、そこでスポーツに関わる仕事をしている多くの人と知り合いになり、とてもよく面倒を見ていただきました。様々な助言を頂きながら、人脈から人脈をたどることで今は愛知大学の硬式野球部のトレーナーとしての仕事をもつことができたのです。
「スポーツに関わる仕事をしたい」という夢を無事に叶えることができたわけですが、自分から積極的に行動し、人脈を広げていった結果だと思っています。理学療法士の資格をとったことで満足して、何もしないで待っているだけだったら絶対に夢を叶えることはできなかったと思います。

―― どんな高校生が理学療法士に向いていると思いますか?
鈴木 理学療法士はコミュニケーションの仕事でもありますから、お話をすることが好きな高校生にぜひ理学療法士をめざしてほしいです。特に高齢者の患者が多いので、おじいちゃん、おばあちゃんのことを好きな高校生だと良いですね。
専門的なことに限らず、「どんなことで困ってますか?」「どんなことが好きですか?」といった他愛のないことでも良いんです。お話をすることでどんどん元気になる患者がたくさんいますし、それも理学療法士の仕事の1つだと捉えています。
あとは、向上心を持って物事に取り組める人に理学療法士になって欲しいです。コミュニケーション・
―― 最後に、受験生へのメッセージをお願いします。
鈴木 私はスポーツに関わりたいと思い、理学療法士になりました。最初の何年間かはスポーツに関わる機会がなかったのですが、自分からどんどん行動したことで夢を叶えることが出来ました。これは私だけのことではなくて、みなさんに無限大の可能性があると思っています。「こうなりたい」という思いがあるのであれば、ぜひそれに向かって頑張って、夢を叶えてください。
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