【連載】いい学校ってなんだろう〜二松學舎大学附属柏中学高等学校編

【連載】いい学校ってなんだろう〜二松學舎大学附属柏中学高等学校編

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右二人目から  森寿直教諭  青木英明教諭  加古幹夫教諭

二松學舎大学附属柏中学校・高等学校は 2012年に中学校を開校し、1期生が今年卒業した。大学合格実績は東大2名(文I・理 I )現役合格をはじめ、他の国公立大学にも複数合格。難関15私大合計が10年前に比べ5名→72名(大学通信調べ)と躍進している。早くも中学1期生から成果 を出すことのできた理由について 、進路部長の青木英明教諭、1期生の中学学年主任だった森寿直教諭、1期生の高校担任だった加古幹夫教諭に話を伺った。
(難関15私大=早稲田、慶應義塾、上智、東京理科、明治 、青山学院 、立教 、中央 、法政 、同志社 、立命館 、関西、関西学院、近畿、南山、西南学院 ※関西学院は07年と比較できるデータがないため含まず)

文責 松本陽一(大学通信)


― 今春、中学から入学した1期生(中入生)が卒業し、2名が東大に合格しました。

青木  最初から東大を目標に掲げていたわけではありません。それよりも、大切なことは生徒の知的好奇心だと思います。学 びの土台となるような知的好奇心を中学の段階で先生方が上手に伸ばしてきたのだと思います。 中入生が高校に上がったとき、いろいろなことに興味をもつ、難しいことを知りたい、そういう生徒が多いなと感じました。

生徒が高校に上がってからも、それを壊さないように心がけました。その中で本人たちは目標として東大を公言するようになり、放課後等を使ってフォローを行いました。このような流れが形になったのだと思います。

― 知的好奇心を伸ばす取り組みについて教えてください。

  中学では、文系・理系の壁なく生徒が幅広い興味をもつための種まきをしました。一つは「モーニングレッスン」(※1)の前に自由参加で行う、朝日・読売・毎日新聞のコラムの読み合わせです。深い知識と教養を身につけると同時に、一 つのテーマでも新聞によって考え方が異なることをコラムを通して学びます。

あと、印象に残っているのが 開校当初からやっている「読書 マ ラ ソ ン 」(※2) ですね。振り返って面白かったのは、読書量がトップ5の生徒の大学進学先の中に東大1名、筑波大2名、上智大1名が含まれることです。読書量と学力は相関関係があるのだと思いました。当時『三国志』がはやっていたのですが、作家による書き方の違いを中学2年生が休み時間中に話し合っていました。この時はしめしめと思いましたね(笑)。

さらに、アクティブラーニングや教科横断型の授業を中学開校当初から行っています。総合学習の「沼の教室」(※3)では、 手賀沼を題材に1年間かけて調査・発表を行うのですが、身近なもの一つとっても、普段の勉強って大事だよねという気づきが生まれます。生活と学びを結びつけることを心がけています。

加古  実は、東大文Iに合格した生徒は理系に行くだろうと思っていました。全国模試で数学がずば抜けて優秀だったからで す。しかし、法曹界に興味があるという理由で文系に進みました。横断的な学びや、新聞のコラムの読み合わせなどを通して、 多くの知識教養が身につき、広い視野をもってやりたいことを 見つける力がついたのだと思います。

  本校の1期生は3クラスでしたが、総合学習や新聞コラムの読み合わせは クラスにまとめて行いました。1クラスにまと めれば担任が3人集まりますし、 副担任も来ます。一つの空間にろいろな先生が入って話をし ていたことが、教科横断型のき っかけになったのだと思います。 例えば、新聞のコラムを読んだ時に私の視点だけでなく、社会の先生は社会の視点から、国語の先生は国語の視点から話をする。普段から文系・理系の壁なく先生が自分の得意分野の話をする。そんな雰囲気がずっとあったんですね。これも効果的だったと思います。

青木  本校は高校から入る生徒(高入生)が圧倒的に多いです。 今春の卒業生は中入生の学びの姿勢が高入生にもいい刺激になったと思います。高入生も高い目標を掲げ、どうするかを自分で考え努力をするようになりました。中入生が学びの上でのけん引役になってくれたと思います。

※1 モーニングレッスン
毎朝25分間、英語・数学・論語の勉強を行う 。英語はスピ ーキングとリスニング、数学は問 題演習と小テストを行う。論語は学校の伝統で、中学では素読の練習を行う。
※2 読書マラソン
中学開校当初から続く読書活動。マラソンの距離にかけて、3年間で42,195ペ ー ジの読破をめざす。現在は、『マイフェバリットブックと題して、本のあらすじと感想を1 分間でプレゼンする取り組みも月1回実施している。
※3 沼の教室
総合学習の時間を利用した体験教室の一つ。学校近くの手賀沼を題材に施設見学や講義を通して 、 手賀沼の環境や歴史に対する理解を深める 。最終的には自ら問題を発見し、調査・研究した内容をもとにパ ワ ー ポ イ ン ト を作 成 。プ レ ゼ ン 、ディスカッションを行う。

沼の教室の様子

― 中学の授業で工夫したことはありますか。

 気をつけていたのは、いかに質問しやすい雰囲気を作るかということです。生徒には「質問するのが恥ずかしい」「後で 聞きに行けばいいや」と思わせ たくありませんでした。手を挙げて質問してくれた時に「いい質問だね」「よく気がついたね」と、生徒の質問を大切にしながら授業を行っていました。生徒とやり取りする中で授業を作っていった印象があります。

加古  普段の授業では、教科書に載っていないような、実践的で難しい問題に取り組むことを日常的に行っていました。生徒 もついてきてくれましたし、もちろんわからないことがあれば、わかるまで放課後などにフォローをしました。

青木  高校に入っても難しいことに対する耐性がありましたね。難しいことが苦痛でなく、楽しむ子が結構いました。授業でも難しい問題を出すと普通は「えー」となりますが、逆にわくわくするというか、ぱっと顔が上がるんです。「先生こういう考えはどうですか?」という反応が返ってくるのは今までにないことでした。

― 国公立だけでなく、難関私立大学の合格実績も大幅に上がりました。

加古  私は高校3年間、中入生の担任をしていましたが、高1の初めから「どうせめざすなら一番をめざそう。うちのクラスは難関大学をめざす」ということを言ってきました。それが今回の結果につながったのだと思います。ただ目標を掲げるだけでなく、根底には生徒との信頼関係がありました。中学の時から「難しいことをやるけど、しっかりフォローする」ということを繰り返しやってきたので、 自分が担任になった時に「加古という教員はどういう教員なのか」ということを生徒はわかって くれていたんです。

青木  全体的に「難関大学をめざす」という雰囲気がありまし た。それに、知的好奇心をもった生徒は自分からいろいろなことをやるんですね。ああしろ、 こうしろと言わなくても自分で方法を見つけます。たまに軌道修正してあげることはありますが、基本的には自習室や学習クラブなどを上手に活用していました。教員が上から引っ張り上げるというよりは、生徒が学びたいことに応えてあげる環境を整えることが重要だと思います。

― 生徒の目標に先生が応えることは大切ですね。

加古  本校で東大をめざす生徒が出た時には、各教科ごとに誰が対応するのかを決めました。先生にとっても東大の問題を解くことは大変なことです。自分の時間を削って、先生も勉強をするということです。

 筑波大も3人中2人は物理学類の推薦入試で合格したのですが、私も入手した過去問はすべて解けるようにしました。入 試当日の朝も生徒に不十分なところを電話で教えて送り出しました。合格した時には本当にうれしかったですね。生徒と一緒に勉強したことが良かったと思います。過去にあった成功例を子どもたちに当てはめるのではなくて、生徒の顔を思い浮かべながら「何をしてあげれば良いのか」を考えました。プログラムを作る時もそうですが、今の状況を見ながら作っていったというのが、結果につながったのだと思います。

青木 目の前にいる生徒の目標 に応えることは当然の仕事です。中学ができて、高い目標をもつ生徒が高校に上がってきたことで、教員が変わるきっかけになったのだと思います。

― 教員間のチームワークはどうですか。

加古  雰囲気がとても良かったです。中学を作った段階で、当時の校長や教頭が温かく見守ってくれました。生徒のためにな ることなら何でもさせてあげるからという雰囲気があり、新しいことにどんどんチャレンジさせてもらえました。新しいことを作るのは大変です。みんなで一つにならないと乗り越えられないことも沢山ありました。結果として、大変なことをみんなで乗り切ったことが、結束力につながったと思います。

 スタッフに恵まれましたね。 何か新しいことをやる時に「やろうやろう!」という雰囲気がありました。「無理だよ」「面倒だよ」という声があると不安になるのですが、前向きな雰囲気に背中を押されました。

― 自問自答というスローガンについて教えてください。

 「自問自答」(※4)という考え方を基に中学がスタートしましたので、「自問自答」が自然と身につくようなプログラム にしていこうという思いがありました。先ほどの沼の教室でも、必ず問いを立てさせるんですね。たとえば「なぜ手賀沼はきれい になったのか」「白樺文学につ いて志賀直哉の作品から手賀沼の情景が読みとれる文章はあるか」など生徒に問いを立てさせる。「365ノート」(※5)もそうです。あえて宿題を課さずに自分で問いを探して、自分の好きな勉強をやってきなさいという形にしました。「何でも与えられる」「頭を予備校に預けてしまう」「先生の言ったことだけをやっていればいい」という生徒は、育てたくなかったんですね。ですから、早いタイミングで、家庭学習一つとっても、自分は何を勉強するのかを考えさせるようにしていました。

― 今後の目標について教えてください。

青木  2020年の大学入試改 革が迫り、主体的に学んでいくことが今後まさに問われようとしています。大学の定員も厳格 化され、今まで以上に入試において差のつく問題を乗り越える力が必要です。ポートフォリオで、大学が高校での取り組みを評価する制度もはじまります。 このような中、中入生だけでなく、高入生に対しても学びの土台をどう作るのかが大きな課題だと思います。東大合格という結果は出ましたが、これからが重要です。二松のメソッドを体系化するための取り組みは今後も続きます。

※4 自問自答
二松學舎建学の精神「一世に有用なる人物」の育成を体現するための指針として 、中学開校時に作られたスローガン。現在では自問自答の集大成として、中学3年次に卒業論文『探求〜自問自答』(写真参照)を各自8000字で作成する。

※5 365ノート
家庭学習の軌跡がわかるノートで1 日1ページ 以上取り組 み 、 毎日提出する。苦手教科の振り返り、繰り返し学習、テスト勉強など、取り組む内容 は自分で考える。

聞き手 松本陽一(まつもとよういち) 1982年滋賀県彦根市生まれ。2005年大学通信入社。情報企画部所属。 入社以来、首都圏を中心に多くの私立の中学校・高等学校を訪問。 学校の成長に関心を寄せる。

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