【龍谷大学】4学科が連携!多様な農業の課題を解決する人材を養成する

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開設2年目を迎えた龍谷大学農学部は、農学をキーにして様々な局面でイノベーションを起こせる人材輩出に向け、順調に歩を進めている。実際にどのようなことが行われているのか。
農学部のこれまでの取り組みと、将来の展望をレポートする。


龍谷大学農学部のコンセプトは「食の循環」(生産・加工・流通・消費・再生)。農業の全体像を理解することにより、農学をキーとして、様々な局面でイノベーションを起こせる人材養成が目標だ。そのため、農作物の生産から加工、流通まで、トータルサイエンスとしての農学を展開している。

2015年4月に開設した農学部は、滋賀県大津市の瀬田キャンパスで1、2年生が学んでいる。これまでに、食の循環のアウトラインを体験する「食の循環実習」が行われた。農学部長の末原達郎教授が、その成果を説明する。

「1年次後期から2年次前期まで、米や野菜の育成、収穫、加工を通して農業の流れを経験す
る〝食の循環実習〞を行いました。値段は付きませんが、自分が生産したものを商品に加工し
て食べるという実習に、学生はとても積極的に取り組んでいました。今後は実際に販売するた
めの流通から消費の過程も学びます。実習を通して農学に目覚める学生も多く、農作物生産の
クラブが立ち上がるほどです」

龍谷大学農学部は、「植物生命科学科」「資源生物学科」「食品栄養学科」「食料農業システム学科」からなり、この4学科は、食の循環のサイクルの中で有機的に連携している。食の循環実習においても、野菜の生産は植物生命科学科や資源生物学科の学生が中心となり、食品栄養学科の学生が作物の食べ方を考え、販売も視野に入れた製品化は食料農業システム学科がイニシアチブをとるという、学科の垣根を越えて農学部全体で実習が行われた。食の循環のプレ体験ともいえるプログラムは大きな成果を上げ、龍谷大学農学部は順調に歩を進めている。

【龍谷大学発の酵母を使ったパンの製造・販売】

この先3年次以降は、所属学科ごとの学びを深めていくことになる。ベースとなる各学科の特徴を見ていこう。
食の基本となる農作物の生命の仕組みを学ぶのは植物生命科学科。トップレベルの教員の指導による実験や実習を通して最先端のバイオサイエンスを学び育種(※)に生かす。植物生命科学科は、すでに生産から流通、販売という食の循環のプロセスを具現化している学科でもある。京都市内にあるパン製造会社のアンデが、同学科保有の酵母を使用したパンを製造・販売しているのだ。植物生命科学科の島純教授は言う。

「酵母は五山送り火で有名な大文字山のけやきの樹液から採取したものです。通常糖分が多いと酵母の働きが弱まり、パン生地が膨らみにくいのですが、この酵母はそういう状況でも膨らむことが特徴です。京都市の技術研究所が龍谷大学とアンデの橋渡し役となり、龍谷大学の酵母を使ったパンの生産から流通、販売という流れができました」

資源生物学科は、農業生産の基本である、土壌学や作物学などのアグリサイエンスを通して、食の基本となる農作物を育てる技術を学ぶ。資源生物学科は育種を行う植物生命科学科と密接な関係にある。前出の島教授は言う。

「例えば、植物生命科学科が作った地球の新しい環境に適合する稲を、資源生物学科が実際にフィールドで増やしていくというように、近接領域が広い両学科は深い協力関係にあります」

【食の嗜好研究センターで本物の味を体感する】

食品栄養学科は、食をキーとして栄養と健康について実践的に学ぶ。そのために活用されるのが、「食の嗜好研究センター」だ。同センターは、日本料理の発展のために教育研究及び文化技術等の普及に取り組む「日本料理アカデミー」とその関連組織の「日本料理ラボラトリー研究会」とともに、和食を世界に発信するための研究活動を推進してきた。16年9月にはこの2団体と日本料理の伝統的な技術に関する研究推進のための包括連携協定も結ばれた。末原学部長は言う。

「食の嗜好研究センターの活動の一つに、研究者と料理人が一緒に日本料理の出し汁の作り方の違いを研究し、日本料理の味を科学的に表現する研究があります。この研究発表に食品栄養学科の学生も参加しました。老舗料亭の出し汁を味わうことを通して本物の味を体験することで、学生は栄養だけではなく美味しさの重要性を感じ取りました。京都にある大学だからでき
ることです。このような食の研究に、食品栄養学科の学生も参加させたいと考えています」

美味しい和食は良い材料に支えられてできている。京都のだし汁を中心とした和食文化を世界に発信していくプロセスには、農場での作物の生産、流通、そして料理の味の追求が欠かせない。食の嗜好研究センターの活動も、学科間が協働する食の循環教育の一環といえよう。

【4学科が連携して農業関連の課題解決を目指す】

食品農業システム学科は、経済学、経営学、社会学をベースに食の流通や農業を支える地域と経済の仕組みなどについて学ぶ、農学部で唯一の社会科学系の学科だ。

「これからの農業は生産量を上げるだけでは成り立たず、社会全体を見渡す視野の広さが必要です。グローバル化が進み、海外からどのような物が入ってきて、自分たちの農産物とどう競合するのか。逆にこちらから売り出す方策などについて、経済学の視点から学ぶ重要性が高まっています。これからの農業は経営的センスが不可欠なので経営学も重要です。さらに、鮮度を保つ技術が進歩し、世界を視野に入れて流通産業が変わっていくことも意識する必要があります。こうした変わり続ける農業に柔軟に対応できる人材の育成が目標です」(末原学部長)

このように、特色のある4つの学科が食の循環サイクルを支えることにより、龍谷大学の農学部は成り立っている。では、将来的にここからどのような人材が巣立っていくだろうか。末原学部長に聞いてみた。

「今起きている社会の諸問題に対応できる農学部にしたい。その点、食の循環実習などを通して農学に目覚め、夢や意欲を持った学生が増えている現状は頼もしい限りです。これからは、あらゆる産業でイノベーションを起こすために、農学の知識が不可欠になってきます。人類共通の課題である食糧問題を、日本発信で解決できる人材を養成したいと考えています」

龍谷大学の農学部は、来年以降、本格的な専門教育に移行することにより、地域や世界を問わず多様な農業のフィールドで活躍できる人材育成が本格化する。その教育・研究力に対する期待感は高まるばかりだ。