【プロフェッショナルの視点】世界中で必要とされる能力とは

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いま世界中で、そして産業のあらゆる分野においてデザイナーの活動領域が広がっているのをご存知でしょうか。アメリカなどでは早くからビジュアル・シンキングやデザイン・シンキングと言われるようなデザイナーの思考をエンジニアに応用したり、ビジネススクールとデザインスクールを結びつけて起業家育成を行うといった試みがなされたりしています。

なぜデザイナーの思考が求められるのか? 会社の経営ビジョン、何らかの企画能力を持った人の思考、研究成果の商品化……あらゆるアイデアは、人の頭の中にあるうちは抽象でしかありません。デザイナーはそれらに姿を与えて、具体化できるというスキルに非常に長けているのです。その姿を与える媒体、すなわちビジュアライズするにはいろんな方向性があります。抽象的な思考を適切なメディアに具体化して明示するということは意外に難しいのですが、全体のシナリオやビジョンを構築する上で非常に重要なプロセスです。そこからプロジェクトを立ち上げ、目的に向かって技術者や科学者、経営者などあらゆる立場の人と協業していく。それが現在求められているデザイナーです。

従来の文系・理系だけでなく “ 美系”とでも言いますか、単に形や外的に施すデザインという特定の分野ではなく、デザイナー特有の能力とクリエイティビティを社会が認めて、どんどん活用される時代になっています。美術大学で学んだ人材が経営や起業に携わったり、あるいは環境設計や生産技術に深く関わったりするのも珍しいことではなく、むしろグローバルでそういう傾向がありますね。そういった意味で進路としての美術大学の捉え方や集まる学生の素養は、日本でも今後大きく変わってくると思います。


深澤直人
多摩美術大学 美術学部 統合デザイン学科 学科長
プロダクトデザイナー
2003年 NAOTO FUKASAWA DESIGN 設立。
卓越した造形美とシンプルに徹したデザインで、イタリア、フランス、ドイツ、スイス、北欧、アジアなど世界を代表するブランドのデザインや、日本国内の企業のデザインやコンサルティングを多数手がける。人間の意識していないときの行動の中にデザインのきっかけがあることを見い出し、それを「Without Thought(思わず)」と名付けた。
1999年からはその名を使ったデザインワークショップを毎年開催し、書籍とともに発表を続けている。2007年 ロイヤルデザイナー・フォー・インダストリー(英国王室芸術協会)の称号を授与される。フランス国立セーブル製陶所招待作家。
2006年 Jasper Morrisonとともに「Super Normal」設立。
2010-2014年 グッドデザイン賞審査委員長。
2012年 五代目日本民藝館館長に就任。